僕らの終焉紀行 | ナノ
脳内麻薬分泌中
意識して霊圧を抑えず、現世に降り立った。
様子見の名目で識に会いに行っていた頃は、死神に悟られぬよう細心の注意を払って霊圧を消していたからか、また無意識のうちに霊圧を消そうとしていたようだ。
識が現世に戻ってまだ一週間も経っていないというのに、もう会いたいと思う自分に自嘲を浮かべた。
「面付いてた頃に何度か来たが、相変わらず現世はつまんねえ処だなァ、オイ!」
「…文句を垂れるな」
一人でいいと言った筈なのに、ついて来た挙げ句文句か。
「へーへーすいませんすいません」
あわよくば、識に会えるかもしれないと思ったから一人でいいと言ったのに。
「…何だこいつら。ジロジロ見てんじゃねーよ」
ヤミーの魂吸によって集まった人間の魂が吸われていく。
ありえない、とは思いつつそれを見て咄嗟に識の霊圧を探す。
「ぶっはーっ!!まじィ!!」
「当たり前だ。そんな薄い魂美味い訳がないだろう」
目を閉じて探せば、此処から少し離れた場所に識の霊圧を感じた。
「連中に俺達の姿は見えん。…一人だ」
これ以上ヤミーの勝手に識が巻き込まれては困る。
「それ以外を殺す必要は無い」
脳内麻薬分泌中
(我らの世界は無意味で)(そこに生きる我等も無意味な存在で)(無意味な我等は意味は無いと知りながらも世界を想う)(けれどそれすら、無意味である)(そうである)(はずなのに)
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