僕らの終焉紀行 | ナノ

笑顔で消去






ウルキオラに連れられ、案内されたのはどこかの宮殿の一室ような場所だった。

「お帰りウルキオラ。そして、よく来たね…識」

冷たいテノールが部屋に響く。
玉座に座る彼が、黒腔と言う道で教えてもらった藍染様なのだろう。
第一印象は、何を考えているのかよく解らない眼をしている、怖い人。

「はじめまして、識です」

会釈程度に頭を下げる。
何故か、井上とは名乗らなかった。

「ふーん、君がウワサの識くんか」

そう言いながら銀髪狐眼の男が近づいてきた。

「どうも…」

「ククッ…どーも、ボクは市丸ギン。よろしゅうね」

「ギン、あまり驚かせてはいけないよ。…いきなりで驚いただろう?私の名は藍染惣右介。好きに呼んでくれてかまわないよ。…さて…識の紹介をしたいところなんだが、今はみんな出払ってしまっていてね。夕飯の時刻には大体揃うから、それまで待っててもらえるかい?」

「はい、藍染さん」

銀髪が市丸さんで茶髪オールバックが藍染さん。
よし、覚えた。

「すまないね。…ウルキオラ、部屋の案内と世話を頼めるかな」

「わかりました。…ついて来い」

目線で促され、来たときと同じように手首を握られた。
嬉しいけど力が強いからかちょっと痛い。




  * * * *




僕にあてがわれた部屋はウルキオラの住んでいる宮の中の一室だった。

「………広っ」

少なく見積もっても、多分5人くらいは住めそうなくらいだ。
しかもトイレ風呂簡易キッチンまで付いてる。ベットなんか天井にレース付いてるし。まさかの姫ベッド。何処のスイートルームだ。

「俺はいつも真向かいの部屋にいる。何かあったらすぐに来い」

「あ、うん分かった」

流石に何も無くても行っていいかとは聞かなかった。

「それから、現世の服は虚夜宮では目立つ。此処にいる時はこれを着ていろ」

そう言ってウルキオラや藍染さん達と似た造りの服を渡された。

「着替えたら俺の部屋に来い」

わかったと返事をしたら、ウルキオラはひらりと裾を翻し部屋を去っていった。












笑顔で消去










ここがきっと、これからの僕の世界。

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