僕らの終焉紀行 | ナノ

地獄で祝言を






久しぶりに、夢を見た。確かに幸せだったけれど同じくらい悲しく切ない夢。とてもリアルで、もしかしたら夢ではなく本当に起こった事でどこか別の似たような世界で体験した事かもしれない。相手はやっぱり靄がかかってて誰か分からなかったけれど、ウルキオラみたいに綺麗な声をしていた。
…起きたらまた、忘れてしまうのかな。でも忘れられるなら、やっぱりこんな夢、忘れた方がいい。きっと。何も知らない方が。たとえ同じ結末を迎えたとしても。
ふと突然、意識が落ちていくのに浮上しているような不思議な感覚がした。夢を見たらいつもこうなる。きっと目覚めが近いんだろう。
そう思った直後、頬に感じた風で微睡みから僕は目覚めた。目前には、見慣れた白い袴。

「…ウルキオラ?」

予想通り、翠色の眼がじっと、僕を見下ろしていた。

「識、お前に話しがある」

来て早々、どうしたんだろう。
何故かさっき見た夢の誰かとウルキオラが被った。夢の内容、夢を見たことを目が覚めた後も覚えていたのはこれが初めてだ。

「ウルキオラ、ど…」

「――――共に来い」

彼は時々からかい程度の冗談は言うけれど、こういった冗談は絶対に言わない。
それに、射抜くように僕の目を真っ直ぐに見る瞳に、瞬時に本気なんだと悟った。




  * * * *




「…ウルキオラ、どうしたの?」

「……、……お前は、」

縋るように僕を見た後、ふっと目を伏せたウルキオラは無表情だったけれど、どこか諦めたような顔をしていた。

「ウルキオラ…?」

「識、何も聞かず俺に着いて来い」

いきなりそんな事言われても正直困る。それよりウルキオラが心配だ。いつもと様子がおかしい。

「拒否は許さない。…縛ってでも、連れて行く」

ウルキオラの背後に黒い穴が開いた。多分、ウルキオラが住んでる世界に続いてるんだろう。
拉致られる一歩手前だというのに酷く冷静な自分に少し驚いた。

「――――識」

翠の瞳が不安気に揺れた、ような気がした。
行かない、という選択肢はないのだろう。縛ると言ったら縛るだろう、ウルキオラは。
仕方ない。この際浦原さんには事後報告でいいか。

「…これから行く先に、ウルキオラはいるんだよね?」

「ああ、」

それなら行くよ、と言ったらほんの少しだけ、表情が和らいだ気がした。












地獄で祝言を













あなたとなら、何処までも。地獄すら楽園にできるから。…なんて、ね

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