僕らの終焉紀行 | ナノ

愛の代償






『――――ウルキオラ』

誰かが俺を呼ぶ。しかし、顔が霞んで誰なのか判別出来ない。
霊圧も何も感じないことから、おそらくこれは夢の中だろう。

『――――ウルキオラ』

何なんだ、先程から鬱陶しい。
ずっと前にも聞いた事のある声が、胸に空いた孔を満たしていく。実際、虚の証である孔が消える訳もないのに。

『――――――大好きだよ、ウルキオラ』

その声に、言葉に、刀傷を負ったわけでもないのに胸が張り裂けるかのような痛みが走った。
自分の背中に腕が回り、振り払おうとするも身体が石になったかのように動かない。
それでも、その温もりが不快なものでは無かったことに、その時の俺は気づきもしなくて。




  * * * *




「……起きて、ウルキオラ」

服の袖を軽く引かれ、目が覚めた。何時の間に寝ていたのか。普段なら、有り得ない事だ。

「本当はもう少し寝かせてあげたかったんだけど、もう夜だから…」

そう言われて時計を見ると、もうすぐ日付が変わろうとしていた。…そろそろ虚圏に戻らなければ、藍染様が不審に思われる頃だろう。

「また来る。……世話になったな」

そう言って、響転を使って開いた窓から飛び出した。













愛の代償













帰り際微かに聞こえた「またね」という声。
この声もあの声も、不快には感じなかった。

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