遍く照らす、 | ナノ

遍く照らす、 / 火群の瞬き




雷神龍は討ち倒された。
共鳴していたミノトも気配を追えないほど深くに落ちたのか、それとも死んだのか定かではないが、ミノトへと流れ込む情動は消え去り、また活動している様子も感じ取れなかったという。
ギルドにとっても、その脅威が遠ざかったことで依頼成功と判断された。

里守達の慰労のため、集会場では予め用意されていた宴用の食材が出されたものの、その空気は重く沈み込んでいた。
偉業を讃えるべき相手のいない、どこまでも虚しい祝宴――と呼ぶよりむしろ、それは通夜に近いものがあった。集会場に響く太鼓の音も今は力なく空気を震わせ、徐々に小さく消え入り、ついには二匹とも桴を振るう手を下げてその場に座り込んだ。
常より太陽のように微笑んでいるヒノエも、突然の喪失に耐えきれないというように泣き崩れ、支えるミノトの目尻も涙で濡れている。
見兼ねたゴコクに付き添われ、双子の姉妹は寄り添うようにフゲンの下へと覚束ない足取りで近付いた。

「里長……」
「ウツシもコガラシもまだ戻っておらん。底が思っていたより深く、広かったようだ」
「明日までかかるかもしれん。お前たちも共に戦っていたのだ、少し休んで……」

労わるようにハモンが放った言葉は、最後まで言い切ることなく途切れた。失言だったと、ハモンが苦く顔を歪める。
共に戦ったのに、肝心な時に助けられなかった。周囲の環境を整えるため共に龍宮砦跡にいたフゲンやヒノエ、ミノト達数人の里守は、手が届かず落ちていく寸前の、アマネの覚悟を決めた顔を思い出す。その決死の覚悟の通り、雷神龍は冥府のような大穴へと落とされた。叩き落としたアマネ本人と共に。

「アマネさん……私の、大切な、っ……里長、ミノトぉ……!」
「しっかりしてくださいヒノエ姉様! あの方は誰よりも強いツワモノでしょう! まだです、まだ……だってまだ、彼らだって……ウツシ教官は、必ず、っ……!」

手からこぼれ落ちてしまった灯火を想い、ヒノエの金色の目から再び涙があふれた。支えるミノトもきつく眉根を寄せ、震える声で必死に諦めかけているヒノエを鼓舞しようとし、あふれる感情を抑えるように言葉を詰まらせる。
ヒノエの我が子の不幸を嘆くような悲痛な声につられ、集会場に集った者達の目にも涙が滲んだ。
そこに、一足先に里へ帰還したウツシが集会場に降り立った。

「――里長、お伝えすることが」

集会場に集った里の衆の視線が、一斉にウツシへと向かう。それに動じず、ウツシは雷狼竜の面を被ったまま里長の側まで進んだ。

「どうであった」
「それが――」



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