遍く照らす、 | ナノ

遍く照らす、 / 禍群の唄
懐古

 ◇

 古代の龍と、今地上を覆う竜は生物学的に異なるという。竜人族は人間種と似通った姿をしているが、その祖を辿れば竜と同じだと。

 ――旋律(うた)が聞こえた。
 ずっと聞こえていた低い地響きは、いつしか聞こえなくなった。今は反響に反響を重ねたいびつな音が、絶えず頭の中で跳ね回っている。まるで水の中で聞くように、結晶の中で閉じ込められたように。
 視界(そと)は金霊テントウを潰し、煮出した汁に墨を注いだように歪み壊れている。朱色にまだらに混ざる黒。そこに時々、溶けかけたモンスターのようなものが浮かび上がって。
 ――祈るような、糾すような、
 触れるもの全てが肌を突き刺し、身を焦がし、溶かしていく。
 人の声なんて随分と聞いていない。全て反響する雑音と咆哮が混ざり、喋り方すら忘れてしまいそうなほどだった。けれど、時々。その中に、意味のわかる音があった。
 雑音だらけの世界で、いつか問われた話を思い出している。
 人の身でありながら竜(モンスター)へと変貌した者は、なんと分類されると思うか、と。
 ――わたし(アマネ)をよぶ、誰かの歌が、



20211211

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