Un amour interdit
刺草が微笑む
桜が舞う。風で散った花弁が遠い空へと吸い込まれ、消えていく。
「今年は同じクラスだといいね」
寄り添うように隣を歩く精市が私に言う。
「同じだったら、先生に呼ばれた時困るけどね」
名字で呼ばれたら二人とも反応してしまう。
「ふふ、俺は何時でも小夜にイタズラできるから嬉しいけどね」
「…変な事、しないでよ?」
意地悪そうに笑った精市に、微苦笑した。
「さあて、どうしようかな」
「もう…」
困った顔をする私を見て、精市が優しく髪を梳く。
「髪、大分伸びたね」
そう言いながら、緩くウェーブがかかった髪の毛先を指で弄って遊んでいる。
「入学したばかりの頃は先生に絡まれたけどね」
「…どうして?」
「髪、巻いてるんじゃないかって疑われてたのよ、私」
前は髪が短かくて今よりもっとふわふわしてたからか、よく先生方には注意されていたのを思い出す。
「今はもう何も言われないけどね」
肩より少し長かった髪は、一年経った今では背中を少し越すくらいにまで伸びた。そのおかげか、ウェーブも少し落ち着いてきている。
「でも、そろそろ切ろうかしら」
どうして、と聞いた精市に部活中縛ってもやはり邪魔になるからと言うと、もう少し切るのは待って欲しいと言われた。
「精市は長いのがいい?」
私は精市と同じだから短いのが好きだったのだけれど。
随分と真剣に頼むものだから、聞いてみた。
「うーん…短いのも良かったけど、やっぱり俺は長い方がいいかな」
小夜の髪、さわり心地が良いから。と微笑んだ精市は、そのまま流れるような動作で一房取った髪に口付けた。
「それに、こうして照れる小夜も見られるからね」
頬が微かに熱くなる私を見て微笑む精市に怒ると、笑いながら躱された。
「ふふ、ごめんごめん」
「本当、精市は昔から変わらないね」
そう言って困ったように笑っても、結局彼が変わらない事が嬉しいのだ。
刺草が微笑む
(本当に意地悪なのは)(どっちだろうね)
刺草(イラクサ)…意地悪な君