Un amour interdit | ナノ

Un amour interdit

ミヤコワスレの淵に








深い深い水の底にいるような感覚。少しの息苦しさと、安堵感。
仲間が大会に、そして精市が手術に向かった。あいにく私は体調を崩してしまい精市の代わりに後輩達の勇士を見に行くことは出来なかったけれど。
行ってくると、そう言った精市に私は薬でぼんやりとしたまま行ってらっしゃいと言って、精市に頭を撫でられたのを合図にまた意識を沈めた。
だから、これは夢。水の中にいる時は、決まって夢を見ている時だ。だから、今私を後ろから抱き締めているのはきっと精市なのだろう。

「精市…?」

お腹の前で交差する腕にそっと触れる。きつく、痛いくらいに抱き締める腕はまるで縋るかのようで思わず苦笑がこぼれた。
どんな時だって、私の一番は精市だ。多分、自分の命よりも。重いなあ、とは思うけれど。

「大丈夫…私がいるよ」

この声が届きますようにと祈って、背後の人影にそっと囁く。
時々、私と精市は同じ夢を見ることがあるから。だから今も同じ夢を精市が見ていると願って、声を出す。

「私はもう大丈夫だから…」

遠い上の方から光が射した。光が水面に当たり、暗い水中が照らされる。

「精市まで、こんな所にいる必要はないよ」

絡まる腕をそっと外す。振り向くと、こんなに近くにいるのに逆光で顔が見えない。精市の肩を押して上へと押し上げると、重石が無くなったかのようにふわりと浮上していく。

「行ってらっしゃい、精市」

精市の手が私から完全に離れると、急に薄ら寒くなった。ごふ、という音と共に息が吐き出され酸素不足で意識が朦朧としてくる。それでも苦しくないのはこれが夢だからか。

「これで…きっと…」

昇る空気の玉を眺めながら、目を瞑る。完全に意識が遠退く寸前、ゆらゆらと水が揺れたような気がした。














ミヤコワスレの淵に














(太陽の下が似合うあなたには)(たくさんいろんなものを貰ったから)





ミヤコワスレ…別れ


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