Un amour interdit
永久のルリハコベ
経過報告の度に、心が凍えた。快方に向かう俺と、少しずつ悪くなっていく小夜。
「小夜、小夜っ」
「っ、あ…」
小夜の口から零れた甘い声に思考が麻痺していく。
好きで好きで、壊して俺だけしか見れないようにしてしまいたいくらい好きで。自分でもおかしいのはとっくに気付いてるけど、止められなくて。
「ぅあ、や…せ…いちっ…」
はだけた胸元に舌を這わせると、逃れるように身体が捩れる。
「好きだ、好きなんだ小夜っ」
純粋な恋ではないけれど。それでも本当に、愛してる。その気持ちに嘘偽りはない。
「や、め…っ!」
小夜が嫌がる度に胸に鈍痛が走る。
「なんで…どうして、小夜なんだよっ」
日に日に弱っていく小夜を見て、心が凍りつきそうな思いだった。
自分も同じ病で倒れていたのに、自分の事以上に不安で、ただ只管怖くて。
「なんで…小夜が、そんな死ぬかもしれないなんて…」
医者が話しているのを偶然聞いてしまった。このまま悪化し続けたら、いつかは死んでしまうと。俺だって、少し前までは同じだったのに。病気の進行具合まで同じだなんて、まるで二人で病を分け合ってるみたいだって、先生に言われてたくらいだったのに。
それなのに、俺が回復していくのと反対に、小夜はどんどん悪くなっていく。
「っ…俺が、テニスを選んだから…?」
テニスの代わりに、小夜を差し出せってことなのだろうか。
「嫌だ…小夜、嫌だよ…」
テニスは大事だ。でも、それでも、小夜だけは失いたくない。
「精市…」
俺を置いてくなと言えば、困ったように微笑む。最初からこうなる事は全部知っていたかのようなその笑みに、体が震えた。
「…好き…好きよ、誰よりも」
小夜の白い手が俺の頬を包む。
「俺だって好きだ…」
抱きしめれば素肌が触れ合った。
「精市、あったかいね…」
暖を取るかのように小夜の腕が背中に回る。
「小夜は冷たいよ」
昔とは逆だ。
「今度は俺が、温めてあげるから…」
「っ、」
首筋に吸い付いて鬱血痕を残す。俺だけが付けられる、俺のだという印。
「お前は、お前だけは誰にも渡さない」
それが例え死神だろうが。
永久のルリハコベ
(ずっと一緒だと)(遠い昔の約束がある限り)
ルリハコベ…約束