Un amour interdit
キンセンカを抱き
熱を持った目蓋に唇を落とす。
薄い膜が張った瞳が俺を見上げてきて、一瞬どきりとした。
「今日はまたどうしたの、お姫さま」
煩い心臓を隠すように、閉じ込めるようにして抱きしめる。
別に、と眉を少しだけ寄せて困ったような顔でそう言った小夜に、ただ疲れただけなのだと分かって安心した。
「…髪、伸びたね」
「そうかな?自分じゃわからないや」
俺の癖のついた髪を摘んだ小夜の白い手を掴んで、握る。病院食ばかりだからか、また少し細くなった気がした。
「背も伸びたよね。見上げると、前より首が痛い」
楽しげに笑う小夜に、俺も笑う。月明かりもない真っ暗な部屋でも表情が分かるくらいに近い距離。頬に手を滑らせば男とは違った柔らかさがある。それでも、触れたから余計にやつれたのが分かってしまって。
「…小夜」
そっと額に口付ける。触れた唇から熱が伝わって、頭が甘く痺れたようにぼんやりとしてきた。
「好きだよ、小夜」
薄く笑った小夜をもう一度強く抱きしめて、ベッドに横たわる。白いシーツに散らばる髪を触るとくすぐったそうにすり寄ってきた。そんな仕草に愛おしさを感じ、普段と変わらない姿に安心して目を閉じた。
キンセンカを抱き
(その体温だけで)(不安が取り除ける)
キンセンカ…不安