Un amour interdit
たくさんの霞草を君に
完治するか危ういと言われていた病は少しずつだけれど、快方に向かっている。このまま順調に行けば夏の全国大会には間に合うだろう。
ただし、手術を受ければ、だけれど。それに今の状態では成功率は五分五分だそうだ。
小夜が大丈夫と言えば本当に大丈夫な気がしてしまうけれど、やはり現実は厳しい。
それでも俺が絶望せず、ネガティブにならないでしっかり前を向いていられるのはやっぱり小夜が傍らにいてくれたのと、自分でも最低だと思うけど、一人じゃなかったからなんだと思う。結局俺は一人じゃ駄目なんだという事と同じだけれど。
でも、ふと時々小夜が居なかったらと考える事がある。俺のことだから、きっと沈んだ心のままたまに見舞いに来てくれる仲間に嫉妬したり、部を任せっきりの事で申し訳なく思ったりとずっとぐるぐる考えているんだろう。想像したら何だか笑えてきた。
「面白いことでもあった?」
微笑を浮かべた小夜が壁に寄りかかって俺を見る。ちょっと想像したら可笑しくなってね、と返せばどんなこと?と聞かれて。困ったと思いながら、お風呂上がりだからか肌がほんのりと赤く染まっている小夜を手招きして、耳元に口を寄せる。微かに香る同じシャンプーの匂いに笑みを浮かべ、そして無防備に近付いてきた小夜の耳を舐めた。
「っ…!?」
驚いたように跳ね上がった小夜が顔を赤らめながら俺を睨む。
怒った顔も可愛い、なんて思いながら悪戯が成功した子供のように微笑めば、小夜は呆れたように笑った。
「もう、吃驚したじゃない」
「ごめんごめん」
その顔は悪いと思ってないよね、なんて言われて誤魔化すように額に唇を寄せる。
「ねえ、小夜…あのさ、」
ありがとう、と言おうとして、口を閉ざした。
これは全国大会が終わったら言おう。ああそうだ、三連覇出来たらプロポーズもしてみようか。
「大好きだよ」
たくさんの霞草を君に
(君に心からの感謝を)
霞草…感謝