Un amour interdit
偶然の矢車草
四月になって学年が上がって、早速クラス分けの結果を弦一郎くんと柳生くんが教えに来てくれた。
「クラス分けはどうだった?」
「A組が俺と柳生でB組が仁王と丸井、Cが精市でDが小夜、Fが柳でIがジャッカルだったぞ」
「またD組か…」
隣の精市が少しむくれる。
「クラスは隣だから、合同授業は一緒だよ?」
「そうだけどさあ」
あーもう、と悔しそうに呟きながらベッドに倒れ込んだ精市に柳生くんが微笑んだ。
「そこまで悔しそうな幸村くんは珍しいですね」
「そうか?」
一緒にいた時間が長いからか、弦一郎くんはきょとんとしている。
「試合でも負けた所はあまり見ませんし」
「まあかっこ悪いところは見せられないからね」
ちらりと私を見た精市に、にこりと微笑む。
「幸村部長に小夜先輩ー!失礼しまーす!」
がらりと開いたドアから赤也くんと柳くん、仁王くん、丸井くんが入ってきた。
「おいお前らっ…!」
遅れてジャッカルくんが入ってきて、病室は珍しく満員だ。
「ジャッカルもいらっしゃい」
荷物持ちでもさせられてたのだろうか、ジャッカルくんの両手にはビニール袋が下げられている。
「ふふ、全員で来るなんて珍しいな」
個々で来ることはあっても、病室の収容人数の関係で全員揃うことはなかなか少ない。全員揃って、精市は少し嬉しそうだ。
「一応言っておくが精市、俺たちはレギュラー全員で見舞いに行く約束は今日していない。偶然全員揃っただけだ」
「ちなみに俺はジャッカルと赤也とケーキ買って来たぜい、幸村くん」
「で、途中で偶然三人と会った俺と参謀がブンちゃん対策で菓子を大量購入したナリ」
「私は真田君が幸村君達のお見舞いに行くと聞いたので着いてきました」
そうしたらなんだかんだで全員揃ったようだ、と弦一郎くんが最後にしめた。
「ま、みんな考える事は同じだったって」
「そうだ小夜先輩っ!!」
丸井くんがどや顔で喋っていたら何かを思い出したらしい赤也くんが遮った。
「ふふふ、なあに?」
「俺小夜先輩と同じD組になったっス!」
同じでも学年が違うからそれは良かったことなのだろうか。そう思いつつも赤也くんがあまりにも嬉しそうに報告するから良かったね、と頭を撫でる。
みんなからワカメと称される髪はふわふわしてさわり心地が良い。
「いくら赤也でも小夜はあげないよ」
さわり心地を堪能していたら精市が私の手を掴み赤也くんに微笑んだ。
「赤也は無意識に馬に蹴られるタイプじゃな」
慌てて後ろに隠れた赤也くんに、仁王くんが笑いながら頭に手を置いた。
偶然の矢車草
(仲間がいることが)(こんなにも嬉しい)
矢車草…幸福