Un amour interdit
イフェイオンを叶えて
ふと窓から外を見ると、満開の桜が咲いていた。
「精市、桜が咲いてるよ」
振り向いた小夜が嬉しそうに外を指差し、窓に駆け寄る。
「もう春だね」
後ろからそっと腕を回せば、回した腕に一回り小さい小夜の手が重ねられた。
白くて細い、小さな手。こんなに頼りなく見えるのに、いつも俺を支えてくれる。
「もし、さ…ずっとこのままだったら、小夜はどうする?」
この先病気が治らないで、ずっと入院生活になったとしたら。
もうテニスも出来ない。通学路を手を繋いで走れない。仲間と馬鹿やったり出来ない。母さんの料理も食べれない。何も気にせず、小夜と眠ることすら出来ない。
「大丈夫」
ぐるぐると嫌な事を考えていたら、小夜の声が響いた。
「必ず、またコートに立てるよ」
暗い思考が押し流されるような、泥水を流す清流のような声。
「精市は、またコートに立ちたい?」
もう一度、テニスがやりたい。小夜の喜ぶ顔が見たい。
「俺、は…」
イフェイオンを叶えて
(見上げてくる小夜の瞳が)(柔らかく細められた)
イフェイオン…星への願い