Un amour interdit
姫空木の口付け
目が覚めたら精市が隣にいた。もしかして、あのまま寝てしまったのだろうか。
まだ朝早い。看護師さんはまだ来ないだろう。
「…精市、起きて」
伏せるようにして眠る精市の肩を軽く揺する。病室は温かいけれど、今は冬だ。冷えてしまう。
「…精市、精市」
「ん…小夜…?」
「そんなところじゃ冷えちゃうから、ベッドに戻らないと…」
小さく唸ったかと思えば、素早く私のベッドに潜り込んできた。
…ベッドなら何でもいい訳じゃなかったんだけれど。
「…今戻っても、どうせ寒いから…いいだろ?」
余程眠いのか、目蓋は閉じたままだ。
絡み付くように抱きしめられ身動きが取れない。また起こすのも可哀相かと思って、しばらくじっとしていたら頬に息が当たり、寝息が聞こえてきた。
視線だけ上を向くと、口を少しだけ開いた精市の寝顔が見える。
そのまま視線を戻せば、息苦しかったのかパジャマの一番上の釦が外されていて、襟元から鎖骨が覗いていた。
「……」
どうせ、まだ誰も来ない。
そう口の中で呟いてから、衝動的に首を伸ばして口づけた。
少しだけ熱くなった顔を隠すように精市の胸元にすり寄る。
誰が来たってもういいや。
そんな半ば投げやりになって私も目蓋を閉じた。
だから私は、あの後精市が顔を真っ赤にしていたなんて、知らなかった。
姫空木の口付け
(次目が覚めた時には)(精市はもう起きていて)(楽しそうに私の寝顔を覗き込んでいた)
姫空木…秘密