Un amour interdit
ゼラニウムを秘めて
ついに俺まで倒れてしまった。ついで言うならば、小夜と同じかよく似た病気だそうだ。
病院のベッドに横たわりながらぼんやりと思考を巡らせるも、赤也の驚いて泣きそうになった顔が頭から離れない。懐いてた人間が二人も目の前で倒れたのだから、トラウマになってなければいいけれど。
何となく、そんな予感はしていた。双子の神秘とやらではないにしても、双子だからその可能性は無いわけではないし。
「治ったとしても…テニスはもう出来ないかもしれない」
テニスは出来るか、と聞いたらそう返ってきた。先生のその言葉に思ってたよりもダメージは少ない。一人じゃない、という俺の根底にある考えがクッションになっているのか。それよりも先ず最初に思い浮かんだのは小夜のことだった。
小夜は、泣くかな。泣いたところなんて数えたくらいしかないけれど。テニスが出来ない。もしもの可能性だったけれど、その一言に小夜の泣き顔が頭に浮かんだ。
「先生…」
振り向いた先生は本人より悲痛そうな表情をしている。
「治す事は、可能ですか?」
先ずは治さなければ何も始まらない。テニスも、何もかも。出来ないと決まったわけでもないのだから。
「先生、俺は完治させてみせますよ」
俺は、まだ、立てる。
ゼラニウムを秘めて
(テニスを奪われた)(それでも俺は)(小夜と同じならば)(乗り越えてみせる)
ゼラニウム…決意