Un amour interdit
変わらぬ節分草
双子の神秘、なんて言葉が存在する通り双子は何かしらの縁で結ばれている。と言っても、殆どが一卵性双生児で二卵生は一卵性と比べるとそうでもない、らしい。それでもやはり胎児の頃からずっと一緒だったからお互いの思考が伝わる事があるようで。
「……馬鹿じゃないの」
目の前で微笑む片割れに毒を吐く。
でも違う、こんなことが言いたいんじゃない。それが分かっているのか精市は穏やかな微笑を浮かべている。
「何で…」
じわりと滲んだ視界に、精市の笑顔が歪んだ。
「小夜、」
肩を抱き寄せられ、額が触れる。
「困ったな…泣かせるつもりはなかったのに」
ゆっくりとしたリズムで背中を叩かれ徐々に落ち着いてきた。
「何で、精市まで…」
何時もの余裕そうな笑みで私を撫でる精市は、本当に普段と変わらない。部活中倒れて病院に運ばれてきたというのに。
「ごめんね小夜…俺、もしかしたらテニスが出来なくなるかもしれないらしい」
ああ、私が倒れた時と逆だな、と頭の中では冷静に考えていながら目は再びじわじわと霞んでいく。
「それならなんでっ、なんで笑ってられるのよ…!!苦しくないの…!?」
私は苦しかった、というより寂しかった。一緒にコートに立てなくなるなんて、考えたくなかった。
声を荒げても、精市はただあやすように背中を撫で続けるだけで。
「…代わりに沢山泣いてくれる人がいるから、じゃないかな」
それなのに、遠くを見つめるような視線で、どこか楽しそうな笑みを浮かべ精市は私に言った。
「例え相手が病気だろうと俺に負けは許されない…勝ち続けるのが、王者立海大の掟だ」
部長としてコートに立っている時と同じ声色で、精市は絶対に治して復帰すると言う。
「それに…こんな事言ったらみんなに怒られてしまいそうだけど、また小夜と一緒にいられて俺今ちょっと嬉しいんだ」
そう言い、柔らかい微笑を浮かべた精市に苦笑がこぼれた。
変わらぬ節分草
(二人で頑張ろう)(そう二人で笑った)
節分草…微笑み