Un amour interdit | ナノ

Un amour interdit

蓬が残る







ぐらりと世界が揺れ、地面に膝を付いた。焦ったように赤也が俺に駆け寄るのを見て感じた既視感に初秋を思い出す。そうだ、小夜が倒れた時も赤也は直ぐに駆け寄ってきたんだっけ。泣きそうな顔をして、いや、本当に泣いていた気がする。

「幸村部長っ…!!」

俺を覗き込む泣きそうな表情に苦笑が浮かんだ。まだ開始時刻じゃないからか人は殆どいないし、幸いにも俺達を見てる奴はいない。

「…大丈夫だよ。ただの目眩だ」

わしゃわしゃと頭を撫でるといくらか表情が和らいだ。

「部長、どうかしたんですか?」

遅れてやってきた後輩がしゃがみ込んだ俺達、というか俺を心配そうに見る。俺に何かあったのか聞くのが少し複雑だ。みんな、小夜が入院してから双子だからと俺まで倒れるんじゃないかってやたらと過保護になってきた気がする。

「大丈夫だよ。最近少し寝不足でね」

「あー…やっぱり小夜先輩がいないからですか?」

「え?」

驚いて見上げると、後輩の身体が大袈裟なくらいに震えた。

「部長、あの噂本当だったんスか?!」

「あの噂…?」

声を上げた赤也に白々しく首を傾げる。大方小夜と俺のことだろうけれど。
気まずそうに顔を合わせた二人に、是非教えてほしいと言えば困ったように眉を下げて赤也が後輩を見た。

「あーっと、高沢が聞いたのは何だった?」

彼は高沢と言うのか。

「オレは部長と小夜先輩が今も一緒に寝てるって噂です。…切原は?」

「俺も似たようなモン」

「……まあ、否定はしないよ」

興味深々といった風に俺を見る二人に笑顔で答えると二人共驚いたような顔をした。

「ふふ…さあ、時間だからそろそろ部活を始めようか」

コートに部員が集まってきているのを確認して、今日の練習内容を伝える。各自始めるように、と言ってみんなが練習に向かう中無意識に辺りを見回した。いつもは小夜が隣か斜め後ろに控えているから、近くにいないと落ち着かないのかもしれない。そう思いながら手持ち無沙汰になってラケットを弄った。ガットが少し緩んでいるから直さなければ。

「っ…、」

久しぶりに真田と打とうかと、真田に声をかけようとしたところでまた軽い目眩に頭を抑える。

「…幸村、大丈夫か?」

「ああ…柳か」

大丈夫だと少し微笑めば、眉を寄せた。試合中にも関わらず心配そうに俺をちらちらと覗き見る赤也に手を振る。心配してくれるのは嬉しいけど試合中はちゃんと前を見ろ。

「赤也め…とりあえず、無理はするな」

お前まで倒れたりしたら、と続けた柳に苦労をかけてすまないと苦笑をこぼした。














蓬が残る














(精市と小夜が被って見えた)(なんて、言えるわけもない)





蓬…不安


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