Un amour interdit
ブバルディアから覚める
不思議な夢を見る。
辺り一面、真っ暗闇。目の前には小夜がしゃがみ込んで俯いている夢だ。
「小夜…?」
こっちを向いた小夜は、泣いていて。慌てて駆け寄って抱きしめるも、小夜は何も言わず泣き続けていた。
でもよく見ると何か黒い、大きなものが小夜の背中に張り付いていて。
「――、――」
泣きながら俺に何かを訴える小夜を見ながら、俺は何故か、無意識のうちにその黒いものに手を伸ばした。
「―――、――」
ぱし、と手を叩かれ、そして目が覚める。
そんな、奇妙な夢を連続で見ていた。そして今日も同じ夢を見た、と言うか見ている。
「…小夜、」
泣かないでと涙を親指で拭う。拭っても拭っても、溢れる涙は彼女の頬を濡らし続けて、何か言いたげに俺を見る。
そしてまた小夜の背中に手を伸ばして。
「――――どうして、」
黒いのに触れた途端、小夜が俺に抱きついた。
夢だから、抱きしめた感触はないけれど。触れた部分が少し温かいような、そんな気がした。
「どうして、あなたは―――」
辛そうに眉を寄せた小夜に、ゆっくりと視界が霞む。そろそろ、目が覚めるのかもしれない。
「立てないくらいに重い荷物なら俺も持つよ。全部が駄目なら、半分で妥協する。だから――――」
口が、勝手に動いた。俺の意志で言ったんじゃないけれど、それはずっと俺が心の底で思っていた事で。
「―――幸村部長?」
肩を揺すられて、はっとしたように目が覚めた。…白昼夢、だろうか。
「大丈夫っスか?」
赤也が心配そうな顔で覗き込む。小夜が入院して以来、赤也はよく俺に構うようになった。
「…ああ、大丈夫だよ」
立ち上がろとしたところで、じっと俺を見る赤也に気がついて首を傾げる。
「……部長は、」
部長まで、いなくなりませんよね。唇を歪ませた赤也が、震える声で言った。
「……もちろんだよ、赤也」
頭を撫でてやると、安心したように力が抜ける。
「…赤也、俺と少し打とうか」
弱音を言ってる後輩には、ちょっとイップスにかかってもらおうかな。
笑顔でそう言うと、途端に真っ青になって柳の後ろに隠れてしまった。
「酷いなあ、赤也」
「酷いのはどっちっすか!!」
せっかく心配してたのに、と叫ぶ赤也に思わず口角が上がる。
「心配してくれてたんだ」
ふふ、と笑うと柳にあまり赤也をからかうなと言われてしまった。
ブバルディアから覚める
(何故だか無性に)(小夜に会いたくてたまらない)
ブバルディア…夢