Un amour interdit
君と菜の花
小夜のいない登下校。駄目人間になっちゃう、なんて言いながらも出来たら毎日来てほしいと言った小夜の言葉に甘えて、あの日以来俺は毎日、平日は部活が終わったら。休日も部活が無い日は朝から面会時間ぎりぎりまで通っている。
小夜が疲れるだろうと思って我慢していたけれど、小夜も寂しいと思ってくれてたみたいで嬉しかった。
「幸村部長ー!!」
後ろから聞こえた聞き覚えのある声に振り向くと、見慣れた頭がこっちに走ってくる。
「やあ、赤也」
見上げてくる瞳はどこかきらきらと輝いていて、そういえば赤也は小夜によく懐いていたなと、少し前の部活風景を思い出す。
「あの、これから小夜先輩んとこ行くんスよね?」
一緒に連れて行って、と言いたげな顔に微苦笑して、一緒に行くかいと聞けば尻尾をパタパタと左右に振る犬の姿が見えた気がした。
「いよっしゃ!!」
そういえばみんな、小夜のお見舞いに行くのにどうして俺の許可を得てから行こうとするのだろう。男子ならまだしも女子まで一々行くのに報告なんていらないのに。別に俺が知らなかったからと怒るわけでもないし。
そう言うと赤也は誤魔化すように下手な笑みを浮かべ、あからさまに話題を変えた。
「そ、そういや幸村部長、小夜先輩がマネージャーになってからなんか変わりましたよね」
コート上でも雰囲気が柔らかくなったというか、と少し吃りながら言った赤也に驚く。
「…そう、かな」
蓮二や真田に丸くなったと言われた時は体重が増えたのかと思っていたけれど。もしかして、この事だったのだろうか。
「容赦ないというか、厳しいのは変わらないっスけど…なんつーか、取っ付きやすくなった?」
厳しい、か。俺の代での全国三連覇という想いが予想以上に重くのし掛かっているのは感じていたけれど。やはり少し厳し過ぎたのだろうか。
「ふーん、」
「あ、いや、その悪い意味じゃないっスよ?!」
俺の視線にわたわたと慌て出す赤也を、笑いを堪えながら見ていたらふと時々小夜が心配そうに俺を見ていたことを思い出した。
「…あの、小夜先輩には黙ってろって言われたんスけど、」
「…?」
「小夜先輩、全国三連覇に向けて練習してる部長を見て、精市はすぐ無理をする、って心配してました」
心配しておいて、無理して倒れたのはどっちだよ。
「…愛されてるね、俺」
病院を見上げ、小夜の病室を見た。カーテンは半分だけ閉められている。
「リア充は勘弁して下さい」
茶化すように言った赤也を軽く小突いてから、病院ではなく近くのコンビニに向かって歩き出した。
「ゆ、幸村部長パワーSなんスから手加減して下さいよって…ちょ、待って下さいって…!!」
「ははっ…赤也、小夜にお土産買ってどっちのが喜ばれるか賭けてみないかい?」
「それどう考えたって俺が不利でしょ!!」
そう言いながらも財布を出して既に準備をしている赤也に笑みがこぼれる。
「部長、俺が勝ったら試合して下さいよ」
「それじゃあ俺が勝ったら赤也、一週間パシリね」
にやりと笑った赤也に笑い返し、コンビニに入った。
君と菜の花
(いちごオレとエクレアに)(今週のジャンプと雪見だいふくか)(小夜の好きなもの、赤也よく知ってたね)(普段から世話になってますから)
菜の花…競争