Un amour interdit
遠退く蓬菊
検査入院をして、陽性反応が出たそうだ。お母さんとお父さんが先生の説明を聞き、私と梓は病室に残り、精市は部活に行かせた。
「お姉ちゃん、病気なの?」
心配そうな梓の表情に、苦笑を浮かべる。
「わからないわ」
「どうして?」
「お医者さんにね、内緒にしてもらったの」
私は検査結果が出る前に、先生にお願いをした。もしも入院する事になって、それが例えどれほど大変な病気でも、大したことがなくても、陰性でないのなら私に病名は絶対に告げないという、お願い。
「だから梓も、お姉ちゃんには内緒にしてね?」
知らない方がいいこともあるのだから。
「うん!」
子供らしく無邪気な妹に笑みを浮かべた。
「…小夜ちゃん、検査の時間よ」
ノックの後に聞こえた看護士さんの声に返事をする。
ああ、梓も一緒でいいか聞かなければ。
「そうだ、ご両親は先生の所でしょう?梓ちゃんもよかったら一緒に来ない?」
聞く前に許可を貰えてよかった。
二つ返事でお願いし、スリッパを鳴らしながら梓の手を引いて歩く。
「そういえば、今日は精市君は一緒じゃないのね」
「はい、私が行けないのもあるし、何より大切な時期ですから部活を優先してもらいました」
昨日散々文句言われましたけど、と言ったら看護士さんが吹き出した。
「ははっ、なんか想像出来るわね」
「お兄ちゃん、今朝も小夜がー小夜がーって言いながら出て行ってたよ!!」
「えー…」
それはちょっと恥ずかしい。
「お兄ちゃん、お姉ちゃんのこと大好きだもんね!」
「あら、仲が良くていいじゃない」
兄妹仲が良いのは良いことよ、と言う看護士さんに思わず苦笑がこぼれた。
遠退く蓬菊
(ただ仲が良いだけなら)(良かったのに)
蓬菊(ヨモギギク)…平和