Un amour interdit
過去のローズマリー
「さよは、おれが守るよ」
幼い頃から口癖のように言っていた言葉。多分、あの頃から既に小夜が好きだったんだと思う。
だから、どんな事からも小夜を守った。近所のガキ大将、クラスのいじめっ子、小夜にちょっかいを出してくる年下の男。
小夜が嫌がることをする奴がいたら、年齢も性別も関係なく直ぐに消してきた。
「いいか、精市。お前は男なんだから、小夜を守ってやるんだぞ」
でも、それは守ると呼ぶにはあまりにも汚くて。
「――――はい、とうさん」
本当は、小夜を独り占めしたかっただけなんだと思う。独占欲を、守る、という綺麗な言葉で隠して。
「―――…せー、ちゃん」
だけど、他人が入る隙間なんてないくらい小夜を独占していた俺でも、太刀打ち出来ない相手がいた。
「さよ…」
それは、まだ俺と小夜が小さかった時の事だけれど。
小夜はとても身体が弱くて、季節の変わり目に加え1ヶ月に一回は高熱で倒れたし、酷い時は入院だってした。
病はいつだって簡単に、俺から小夜を攫っていってしまっていた。
対照的に身体が強かった俺は、いつもそれが悔しかった。俺は滅多に風邪も引かなかないし、多少の事では怪我だってしないのに、どうして小夜だけが、と。
「せー、ちゃ…」
小夜の蚊の鳴くような声。
「さよ、おれがいるよ」
小夜が苦しむなら、俺が代わってあげたい。代われないのなら、俺も同じだけ苦しめたらいい。
苦しそうな小夜の手を握っても、小夜が楽になれるわけではないのなら。
「…、…」
悔しい。悔しくて、視界が滲んだ。
「…泣か、ないで…」
ベッドから小夜が手を伸ばす。細く小さい色白の手は、俺の頬を包んだ。
「痛いの…?苦しいの…?」
小さく頷くと、小夜は大丈夫、と笑って、笑顔で俺を抱きしめた。
過去のローズマリー
(あなたを害するものは全て)(私が持っていくから)
ローズマリー…記憶