Un amour interdit
現に浮かぶ薇
覚めない夢はないけれど。もしもそれが幸せな夢なのだとしたら、覚めないで欲しいと私は思う。
「おはよう、小夜」
目が覚めてすぐ、耳の近くから聞こえた低い声に身体が震えた。
「せい、いち…?」
振り向くと精市の鎖骨と胸板が見えて、慌てて前を向く。背後から抱きすくめるようにして覆い被さる精市はくすくすと楽しそうに笑って、お腹辺りに回していた片腕で私を引き寄せた。
「ふふ、恥ずかしいの…?」
素肌同士が触れて、体温が直に伝わる。
「小夜…」
熱い吐息と甘い雰囲気に昨夜何があったのか真剣に思い出そうとするも、何も思い出せない。
「照れてる小夜も可愛いよ」
顎に手を添えられ、強制的に振り向かせられる。
「、んっ…」
噛みつくように口づけられ、怯んだ隙に精市が私を押し倒すような体勢に持っていかれた。
「やめっ…放し、」
「ダメ。もう離さない」
助けて、と呟くも声が震え、掠れる。
「何も、怖がる事はないよ」
だって。
「俺と小夜、二人だけなんだから」
「ぁ…い、や…っ」
うっすらと笑みを浮かべた精市に、背筋に冷たいものが伝うのを感じた。
現に浮かぶ薇
(怖い)(けど、)(私以外を見ない精市が嬉しかった)
薇(ゼンマイ)…夢想