Un amour interdit

コリウスに溺れる




目が覚めて、一番最初に見るものはいつだって片割れの寝顔で。朝に弱い片割れを予定より少し前に起こすのが、私の役目で。
抱きしめてキスをして。まるで恋人同士のように振る舞う。
誰に何と言われようが、それが私たちの日常だから。離れるその日が来るまでは、今はまだ、この位置は誰にも譲りたくないと、隣りにある穏やかな寝顔にそう思った。

「…精市、朝だよ」

いつの間にか握られた手をそっと離し、細いながらも適度に筋肉がついた身体を揺する。

「、…さよ…？」

普段より低く、寝起きのせいか少し掠れたアルトに小さく心臓が跳ねた。

「おはよう精市。今日、部活だよ」

立海のテニス部は関東でも有数の強豪校だから、部活だって当然土日もある。
私は女子テニス部のマネージャーだから、今日はないけれど。
とりあえず予定ではこのまま二度寝コースだ。

「そう、だったね…」

欠伸をしながらゆっくりと起きる精市に、何だか猫みたいだな、と思った。

「起きた？」

「うーん…」

眠たそうにぼんやりしてる精市に、笑みがこぼれる。

「小夜ー」

眠気眼の精市が、甘えてくるようにぎゅっと抱きしめてきた。

「はいはい」

軽く背中を叩くと、さらにすり寄ってくる。

「今日も可愛いよ、小夜」

ふふ、と笑いながら唇を重ねてきた精市に、そっと身体を預けた。

「好きだよ、小夜」

「っ…」

心臓が痛い。
甘く囁くかのような声色に身体が熱くなった私を見て、満足そうに微笑んだ精市はまた私に愛してると囁いた。

「……、…よし。それじゃあ起きるよ、小夜」

時計はちょうど起床予定時刻を示している。

「あ、そうだ。小夜…おはよう」

そう言って微笑む精市に、私も微笑んだ。

「……好きよ、精市」

名前を呼ばれる度に嬉しくなる。行動に一喜一憂し、女の子と仲良く喋っていたら嫉妬だってする。誰にも渡したくない。
そう、思う事がイケナイ事だと解ってはいるけれど。

「俺も。愛してるよ、小夜」

嬉しそうな精市に、理性はいつも奥底に沈んでしまうのだ。













コリウスに溺れる




















(まるで底なし沼に落ちたような恋でした)




コリウス…叶わぬ恋