Un amour interdit
溶け合う鈴蘭
例えばもしも、世界に二人きりになったとしたら。
そんな事を昔、真剣に考えた事があった。
「小夜だったら、どうする?」
「…私?私は…そうだな…どうもしない、かな」
微笑みながら言われた言葉に少しだけショックを受けた。せっかく二人だけの世界なのに、と。
「だって、二人きりになっても、今とあまり変わらないでしょう?」
朝目が覚めたらすぐ傍に体温があって、時折膝枕で昼寝をして、そして夜寝るときは寄り添って眠る。
なるほど、確かに今と大して変わらない。
「それに、今だって二人きりの世界みたいなものじゃない?」
繋げたシングルとセミダブルのベッド。小さい頃からずっと二人だけのその部屋は、家族と住んではいても確かにこの部屋だけ孤立しているかのように静かだった。
「小夜…」
小夜の長い髪に手を入れる。さらさらと滑り落ちるその髪は俺と同じシャンプーを使っているのに、俺より遥かに綺麗だ。
「…男女の双子って、前世で悲しい別れ方をした恋人達なんだって」
ふと、同級生が話してた内容が思い出される。
「来世では、来世こそは共にって願いが双子なんだって」
双子になったら、結ばれないのにねと笑い、小夜を見上げると小夜は何か考えてるような表情をしていた。
そんな小夜をしばらく見ていたら、小夜の唇が微かにそれでもと動いた。
「それでも…傍にいたかったんじゃないのかな」
例え結ばれることがなくとも。
「いつかはお互い別の誰かを愛すとしても、お互いは絶対に唯一の存在であり続ける」
なんとなく、わかる気がする。そう言って少しだけ微笑んだ小夜に、俺は慌てて起き上がった。
「俺はっ…」
そこまで言って、俯く。こんな事になるなら、あんな事話さなければよかった。そう思ったところで名を呼ばれ、顔を上げる。
「…精市、」
「俺、は…」
手を伸ばした小夜を、すがりつくように腕の中に閉じ込めた。
「俺は…絶対に小夜以外好きにならないし、愛さない」
肩口に顔を埋めているせいで声がくぐもる。
双子だとか、家族だとか、そんなの関係ないんだ。
「精市、」
温かい手が頬に触れる。目尻に柔らかい感触がして、そこで初めて自分が泣いていたことに気がついた。そのまま小夜の唇が頬から唇まで滑り落ちる。
「は…」
肩に置かれた手をそっと掴む。唇を合わせたまま、小夜の背中を支えながら仰向けに倒れ込んだ。
「ん、ぅ…」
背中を支えた手を腰へ、掴んでいた手を後頭部へと回す。
「っ…はぁ、せい…いち…」
苦しげに呼ばれた名に、もっともっとと小夜の身体を引き寄せた。
溶け合う鈴蘭
(愛か)(恋か)(依存か)(俺にはもう)(分からないけれど)
鈴蘭…純愛