Un amour interdit
酢葉の行く先は
「小夜…」
部屋に入ってすぐ、精市に押し倒された。
「待って、まだ着替えてなっ…!!」
「どうせ脱ぐんだから、少しだけ…ね?」
耳元で囁かれ、背筋がぞわぞわと粟立つ。
制服のブラウスのボタンを全て外されて、中のキャミソールが露わになった。
「…へえ。俺が言った通り、ちゃんと上に一枚着てるんだね」
「っ…」
精市の冷たい手が腹を這い、背中に回る。指先が下着に当たったのを感じて、この先何をするのか想像してしまい、強く目を瞑った。
「…まだ、怖い?」
こつん、と額が合わさる。
きつく閉ざしていた目蓋を開けると、眉を下げ困ったような表情をしている精市と目が合った。
「……、…」
怖いわけではない。でも、怖くないと言ったら嘘になる。
好きだから触れたいというのは解る。でも、私も同じかと聞かれると、分からない。
精市の事は好きだ。好きだから、触れられるのもキスされるのだって嫌じゃなし、私もしたいと思う。だけど、これより先に進もうとすると身体が震えてしまう。
「…ごめん、私…」
怖いのだろうか。進むことが。
「…大丈夫だよ、小夜」
そっと触れるだけの口づけをした精市は、穏やかに微笑んでいる。それでも、少しだけ寂しそうな表情に、偶にはと私からも口づけた。
「もう少しだけ、待っててくれる…?」
「うん。…俺も、焦らせてごめんね」
でも、少しだけこうさせて。そう言って、顔を肩口に埋めて痛いくらいに抱きしめる精市の背に、そっと腕を回した。
酢葉の行く先は
(ごめんね)(声には出さないで)(小さく呟いた)
酢葉(スイバ)…情愛