Un amour interdit
魔王のアカシヤ
紅葉が始まった初秋。先輩方が引退して俺はテニス部の部長として実権を握れるようになった。
「部長就任おめでとう、葛城さん」
小夜の席に座る彼女に微笑んで言えば、幸村くんこそおめでとうと返ってくる。
「…で、わざわざ小夜ちゃんがいない時に呼び出して何?」
警戒したように俺を見る葛城さんに笑みを深めた。
「いや…そろそろ小夜を返してほしくてね」
途端、葛城さんの顔が険しくなる。
「…まるで、小夜ちゃんは君のものみたいな言い草だね」
「ふふ、当然だろ」
小夜は、ずっと昔から俺のものだ。そして俺自身も小夜のもの。
「…わからないな、幸村くんは何が言いたいの」
話題を変えるように、息を吐いて俺を見た。
「小夜を、男子テニス部のマネージャーにしたい」
「…ああ、だから私を呼び出したんだ」
口調こそ柔らかくなったものの、表情は未だ険しいままだ。
「前部長は小夜を溺愛していたからね。…葛城さんなら、話が通じると思って」
君が部長になるのを待ってたんだ、と言えば、眉間に皺が寄った。
「……、…俺は、小夜を愛してるよ」
少しの間を置いて、呟くように声を出す。
「それは…家族として?」
「もちろんそれもある」
「…、…君達は、兄妹だよ」
自分だって言ってただろうと言い、今ので俺が小夜を異性としても見てるのが分かったのか、葛城さんは苦虫を噛み潰したような顔で俯いた。
「俺からしてみればそんなことは何の障害にもならない」
兄妹に恋愛感情を抱くことは、禁じられてなどいないのだから。
「……」
眉間に皺を寄せ、睨むように俺を見る彼女に微笑む。
「好きだから…傍に置いておきたいから、マネージャーに?」
「小夜のマネジメント力も含めて、ね」
だから、部長としても俺個人としても小夜が欲しい。
不満気な葛城さんにそう言えば、苦い顔をした彼女が口を開いた。
「……わかった。でも、最終的な決定は小夜ちゃんにさせて」
「勿論だよ」
「…幸村くん、」
魔王のアカシヤ
(好きならしっかり見てろ、だなんて)(見てるからこそ)(こんなにも不安になるんだよ)
アカシヤ…秘密の恋