Un amour interdit
歪んだ薔薇
トロフィーを持ち、真田君や柳君たちと微笑む精市を観客席から眺める。
彼らは先代に続き、全国大会二連覇という偉業を成し遂げた。その功績には勿論、精市たちも関わっているわけで。
「―――…」
精市のテニスはまだまだ上に行く。
それをあんな近距離で、あの二人は…いや、あの二人だけじゃない。これから出来る彼の新しい仲間たちは見れるんだ。
「いいなぁ…みんな」
前までは、私の特等席だった場所。一番近くで精市のテニスを見て、サポート出来たのに。
男子テニス部に、マネージャーと言えど女子は入部できないから仕方ないけれど。悔しい、なんて。
「やっぱり、寂しいのかなぁ…」
ずっと精市のサポートが出来たらいいと思って、スクールの先生に教わってマネージメントについて勉強してきた。
精市の専属マネージャーになりたいと願って、小学生の頃からずっとノートもつけていたのに。
男女で分けられ、精市のテニスが近くで見られなくなってしまった。それでもマネージャーをやればテニスを見る機会が増えると思っていたけれど。
「…無理かな、これじゃあ」
動かすと痺れが増す右手に、これじゃあそのうち本当にただ見てるだけになってしまいそうだと思った。
それに、ずっと痺れてるわけじゃないけれど、痺れる時間の間隔が日に日に狭まっていくのに気付いてからは、それがたまらなく不安になる。ただの手の痺れじゃないことだけは、何となく分かっているから。
歪んだ薔薇
(もし私に何かあったら)(精市の思考は私で一杯になるはずだから)(重荷にはなりたくなかったのに)(嬉しいと思ってしまう)
薔薇…愛情