Un amour interdit
染まりゆくサルビア
いつものように、小夜を抱きしめて眠る。俺の方が暑さに強いのと、体温が低いからかあまり暑さは感じない。むしろ、程よい温かさが心地良いくらいだ。
「…精市?」
ふわりと香るシャンプーの匂いに、顔を埋める。
俺の腕に頭を預けて大人しく抱きしめられている小夜が、見上げてきた。
「…小夜、少し熱ある?」
腕の中にある熱が、風呂上がりにしては普段より少し高い気がする。
「…そう、かな?」
「うん。…なんか、いつもと違う」
伊達に毎日抱きしめてないからね。
俺が言うんだから間違いないよと言うと、腕から抜け出した小夜は体温計に手を伸ばした。
「ん……あ、れ…?」
ベッドから乗り出して棚を漁る小夜に危ないと思い、落ちないよう手を伸ばそうとした瞬間。
「っ…!」
「うわっ…!」
ずる、とシーツごと落ちかけた小夜を捕まえたら、俺まで体制を崩して二人揃ってベッドの下に落ちた。
「び、びっくりした…」
俺まで落ちてなかったら、小夜は多分頭を床にぶつけていただろう。
「はぁ…俺の方が驚いたよ、小夜」
ゆっくりと息を吐き、後頭部に回した手を引き寄せて額を合わせる。
冷たいと呟いた小夜に微苦笑するも、吐息がかかる程の至近距離に少し緊張した。
「んー…やっぱり、熱あるね。昨日のど掠れてたし、夏風邪じゃないかな」
それか、多分働き過ぎだろう。
「明日の様子を見て、酷くなりそうだったら部活は休んだ方がいいよ」
「ん…わかった、そうする」
首筋に触れると気持ちいいのか目を細めた。
「小夜…」
手はそのまま頬へと滑り、淡く色付いた唇に触れる。
まるで俺が押し倒しているかのような状態に、自然と顔は小夜の方へ近づいて。
「…っ、」
小夜が瞳を閉じたのを合図に、軽く合わせただけのものを徐々に深くしていく。
「ん、ふっ…」
聞こえた水音にひどく興奮する。
こういうキスは初めてで、やり方なんて知らないはずなのに。もっともっとと求める気持ちが止まらなくて。
「ん、んっ…」
苦しくなったのか、小夜が胸を叩いた。
「っは、ぁ…」
唇を離すと銀色の糸が間を伝い、ぷつんと切れる。
「小夜…可愛い」
上気した頬を撫で、そっと抱きしめた。
「せ、いち…」
心臓の音が聞こえそうな程近い距離に、やっぱり少し緊張するけれど。荒い息で名前を呼ばれた瞬間、背筋に甘い痺れが走ったのを感じた。
染まりゆくサルビア
(手に入るのなら)(どこまででも堕ちてみせよう)
サルビア…恋情