Un amour interdit
静かなアーティチョーク
夏休みに入って、テニス部は男女共に忙しくなった。
「ゆかりちゃん、一年と二年はそろそろ休憩させた方がよさそうだったよ」
三年も含めたレギュラー陣は大会へ向けて猛特訓。そして、他の二年は来年へ向けて試合形式での打ち合い、一年はボール拾いを卒業して二年と一緒に試合をすることになっている。
「そうだね…それじゃあ、休憩入れるよー!!」
そしてマネージャーは夏休みが一番忙しくなる季節で、通常のドリンク作り、タオルの洗濯に加え一年が担当していたボール拾いとコート整備も追加される。
「…小夜ちゃん、小夜ちゃんも休んでいいんだからね?」
「うん、ありがとう。…でも、ゆかりちゃんが休まないなら私も休まないよ」
大会が終われば、仕事も少し減る。たった一月とちょっとくらい、選手ほど体力は無いけれど、私だって頑張れる。
「…それにね、ただでさえマネージャーは人手不足なんだから、私が休んだら仕事が増えちゃうもの」
でも一段落ついたらちゃんと休むよ、と告げればどこか安心したようにゆかりちゃんは笑った。
「小夜ちゃんに何かあったら幸村くんが恐ろしいから、ちゃんと休みなよ」
何それ、と笑いながらクーラーボックスを抱える。
「っ…!」
力を込めた瞬間、ぴりと右手が痺れ抱えたクーラーボックスが落ちた。
「小夜ちゃん…?」
がたんと音を立てて落ちたクーラーボックスに、ゆかりちゃんだけでなく他の選手も振り向く。
「…ちょっと、昨日ゲームやり過ぎたのかも」
夜更かしし過ぎちゃったと、そう言って苦笑いをして逃げるように部室に走った。
静かなアーティチョーク
(痺れた手に何故だか不安になった)
アーティチョーク(朝鮮薊)…警告