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日記・更新

オンボロ三人組
2023/06/18 11:17



「由々しき事態ね」
「……千夜。憤る姿も美しいが、炎が出てしまっているよ」
「出してるのよ。ねぇ、最近この寮舐められ過ぎじゃない?」
「構ってほしいだけだろう。其方は幼体と言えど女神。誰よりも美しいから」
 全面的に同意はするが、イロハの親友を豪語するヴィルが聞いたら憤慨するだろうな、とユウはここで思考を止めた。黒化した千夜が推しのユウは先が読めたからだ。
「領主様モードで褒めても機嫌は治らなくてよ。私、あからさまに下に見られるのは腹立つのよね。それにグリムの教育にも悪いわ」
「……飼い主が誰かは流石に覚えただろう?」
 つい、と蜜色と紅玉の視線がグリムへと向く。
 グリムはかつてハーツラビュルの寮生に影響され、尊大な態度を取っていた時期があった。即座に教育を施され今やオンボロ寮のマスコット兼ボディーガードだが。
 その教育した二人から見られたグリムは、途端にただのネコチャンの振りを始めた。ユウが喉を撫でるとゴロゴロと音を出し、無害ですよと腹を見せ体をくねらせる。耳毛の青い炎を気にしなければ、どこからどう見てもかわいいネコチャンである。
「ふなぁ。もうちょい上がイイんだゾ」
 口調は既にいつものグリムであるが、そこはやはりネコチャン。うにゃりと身を捩ると、喉を撫でていた指はいつの間にか耳の付け根を撫でていた。ついでにかわいいお手手で指はしっかり固定されている。脊椎動物とは思えない動きだったが、そも猫とは流体であるので。
 うにゃうにゃと鳴くグリムとユウが戯れていると、ふいに涼やかな女神の声がオンボロ領に響いた。
「そうだわ。イロハ、決闘しましょう」

「……え?」
「ふな?」


次回 女神の幼体vs魔王の後継

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