第八話.思い出の場所
「ワシと散歩に行かねぇか?」
『私と…ですか?』
「おう!ワシとアンタの二人で」
『構いませんよ』
今、ついさっき出会ったばかりのこの人は
気のせいなのかもしれない
彼の瞳は優しく暖かでとても寂しそうで
どうしてこんな表情をしているのか
気になって仕方がない
「んじぁ、行くぞ『きゃっ?!…降ろしてください!』この方が速いつべこべ言ってんじゃねぇ」
『えぇー!?』
突然横抱きされれば花開院家の塀を飛び越える
『あの、どちらに…と、言うより散歩じゃありませんよね』
「デェトとじゃ、デェト」
『でぇと?何ですかそれ』
「アンタと行きたい所がある、黙って着いてきて来れ」
そして、連れられた場所は何処かの丘
見覚えのある懐かしい場所
でも懐かしいだけで、いつ此処に来たのかさえ
覚えてなくて思い出そうとすると
頭の中がグルグルとなって
『…あの』
「ん?」
『どうして、私を此処に連れてきたのですか?』
「別に何となくアンタと…椿と来たかったから連れて来た」
『…』
この人の一言一言が懐かしく感じる
どうしてだろう…。
2013/03/21
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