気持ちの〜 | ナノ


第二話.また一難


騒ぎの発端は皐月と名乗る

少女が現れたのが事の始まり

その子は実は昔馴染みの

幼なじみの子であって…


「姉様、今日こちらに泊まって
行ってもよろしいですか?」

「なっコイツが帰らないと言うなら
ワシも此処へ残るぞ」

「ちょっ夜は帰ってもらわないと
ただでさえ今、江戸で何がおこっているかわかってるでしょ?!」

「そうよ、速くお帰りなさい」

「僕は、みーんな泊まってっても
全然かまわんよ」

『御迷惑おかけします…』

「それで姉様、明日迎えを手配
しておけばよろしいですよね?」

『そのことなんだけどねっ』


突然再び、ぬらりひょんの胸元

へ引き戻されれば離さないと

言わんばかりに抱きしめられた


「アンタの兄貴と椿がガキの
頃に何を約束したかワシには知っ
た事じゃねぇが今の椿は
ワシの女だ諦めて帰れ」

「まぁ妖の分際で椿姉様
に手を出されたと言うのです?!
身の程を弁えなさい!」

「残念だったなアンタが何と言おう
とワシは椿と別れるつもり
なんて毛頭ない」

「貴方と話ていても拉致が
あきませんわ…そんなことより
椿姉様から離れなさい」

「嫌じゃ」

『ぬっぬらりひょん離して下さい!
…と言うより言い合いをしないで下さい//』

「すまん」




ぬらりひょんから解放され

二人の言い合いが暫く続いた末

結果、引っ越しや祝言の話は

後に回し雪麗さんを含め全員が

花開院家にお世話になることに

なった。


「ところで姉様?珱姫はついに
姉離れでもなさったのですか?」

『それは…』

「そんなことありません!」

「「『珱(姫)?!』」」


私が口を開いたのもつかの間

突然今まで閉まりきっていた

部屋の襖が開き衣服こそ乱れて

いないものの目は赤く腫れ

ふさぎ込んでいたのか髪の毛も

若干乱れている珱の姿がそこにはあった。


「姉様…昨日はいきなり取り乱し
てしまい、姉様に酷い事を…」

『そんなの気にしてないから
珱も気にしないで、ね?』

「ありがとうございます…
私ずっと考えて姉様は私の姉様
なのは変わりないから…例え…
妖様と姉様が口吸いなさったと
していても姉様が妖様を好いて
おられるのであれば私は、珱姫
は我慢致しますっ…くっふぇ…」

『珱、泣かないで』


どうしようもなく涙を流す珱

を抱きしめながら自分は珱を

泣かせてばかりだと思えば

胸が締め付けられる感覚になる

唯一の肉親をこんなに傷付けて

平気でいられるはずがない…。


「あらあら本当、相変わらず
泣き虫ね珱姫は」

「なっさっ皐月さん…何時から
此処へ…」

「何があったから知らないけど…
気づいてたから、出てきたん
じゃないの?!まぁでも私の事
覚えてくれてたのね」

「それは、(嫌いな人だからこそ)
忘れたくても忘れられませんよ」

「そんなに私のこと思って
くれていたの?ありがと」

「いえいえ」


先程まで泣いていたのが嘘だと

思わせられるほど珱の皐月を

見る目つきが変わり

二人の間に見えない火花でも

飛び散っているように思えた


「そういえば椿姉様…
髪、切られたのですか?
もしかして私のせいなんじゃ…」

『そんなことないよ、ただ邪魔
だったから雪麗さんに揃えて
もらったの』

「そうだったんですか、でも
短くなっても姉様は素敵です」

『ありがとう珱』




その日の夜…


『雪麗さん、お風呂一緒に
行きませんか?』

「そうねせっかくだし今の内に
行っておこうかしら」

「ワシも「『それは駄目(です)』
おぅ…」」

「何なら、ぬらちゃんは僕と
一緒に入ろうか?」

「オマエとは入るつもりはない!」

「「椿姉様!私もご一緒
してもよろしいですか?」」

「真似しないで下さい!」

「真似したのはそっちでしょ?!」

『じゃあ、皆で入ろ?』

「アンタ達…双子みたいね」

「「こんな人と一緒にしないで
下さい!」」

「椿も大変よね…」

『あはは』


このような珱姫と皐月の

言い争いは就寝するまで続いた


「珱姫達は寝たか?」

『はい…ついさっき』

「此処だと万が一起きた時に
厄介だからな…来い」


手招きされるままに近寄れば

そのまま抱き抱えられ

以前ぬらりひょんに連れられた

ことのある場所へやって来た。


『此処は、ぬらりひょんに
二回目に会った時に連れられた
場所ですよね』

「あぁ、覚えてたか」

『クスッあの時はいきなり抱き抱え
られちゃうし宙を浮くなんて
考えもしなかったから怖かった
んですよ?』

「さっきも…」

『はい?』

「さっきもワシは椿に怖い思いをさせたのか?」


振り返りぬらりひょんの顔を

見つめれば先程までと

打って変わった真剣そのものの

ような表情をしていた。


『今は、ぬらりひょんを貴方を
信じています…だから怖いとか
考えていませんでした、だから
これからも私の側にいて下さい
私だけを見て下さい…私も貴方
から離れませんから//』

「…あぁ約束する」

『よかった//』


口吸いをするわけでもなく

ただ額を合わせるように

顔を近付け約束を交わせば

朝日が昇るまで今まで

一緒にいられなかった

時間を取り戻していくように

他愛のない会話を続けた。


『そろそろ朝、ですねっクシュッ』

「朝でも今は冷えるからな
これを着ておけばいい」

『これじゃあ、ぬらりひょんが
風邪をひいてしまいます…』

「それなら一緒に入るか」

『えっ//』


一度脱いだ羽織りを着直すと

有無を言わせずに私も抱きしめた






「そろそろ帰るかアイツ達が
起きたら騒動が起きるからな」

『あのっ、もう少しだけ…このままでいても
いいですか?』





「あぁ」







「そろそろ帰るかアイツ達が
起きたら騒動が起きるからな」




自分でも我が儘なことを

言っているのはわかっている

私のことを考えてぬらりひょん

は帰ろうと言ってくれている

のもわかっている…でも一分

一秒でも彼と一緒の時間を

大切にしておきたいと思った

そして何も言わずに静かに

抱きしめてくれている手に力が

込められれば了承してくれて

いることがわかった。





『我が儘を言ってすいません
それじゃあ帰りましょうか』

「あぁ」



軽々と抱えられれば数分足らず

で花開院家の屋敷に戻れた

そしてこれから何時も通りの

日常がやって来るのだ


「椿姉さっ「姉様!皐月は
心配しておりましたの妖に何も
されませんでしたか?!」」

『心配かけてごめんなさい』

「そんな謝らないで下さい」

「それにしても…酷い言われよう
よね…アンタこの子に何か怨まれる
ようなことでもしたの?」

「馬鹿言え昨日で初対面なのは
雪麗も知ってんだろ?」

「まぁ言われてみれば…」

「あら?私は貴方を怨んでなんか
いませんわ、ただ本能的に貴方
が嫌いなだけです」


本能的にとは、ただ単に妖怪が

嫌いなのだろうか

それとも、ぬらりひょんが

嫌いなのだろうか…

周りがざわつきながらも

そんなことを考えていた時


「椿ちゃんにお客さんが
来とるけど、どないする?」

『私に、ですか?』

「それは、きっと兄様です
昨夜急ぎで家の者に文を届け
させたので兄様が迎えを送って
下さったのでしょう」

『迎えって…そんな』

「そうですよ、いくら何でも
急すぎます」

「じゃあ珱姫は来なくても「皐月
その言い方は珱姫に失礼だよ」
兄様っ?!」


目の前に現れた昔馴染みの

面影のある青年…


『貴方は…』

「久しぶり椿姫、珱姫
数年の間に一段と美しくなった」


そう彼は私の幼なじみ

友達以上の存在であって

大切な人…


「椿?」

『あっ、ゴメンなさい…
ぬらりひょん?』

「コイツからは嫌な気配がする」

「アンタ最初っから喧嘩売って
どうすんのよっ!」

「妖様?」


自分の物だと主張するように

ぬらりひょんに抱きしめ

られれば彼を警戒するように

彼と私を遠ざけるように

後ろに下がる…

この時の私には予想もして

いないことをぬらりひょんは

予想しているかのように…。





《2012/02/25》

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