気持ちの〜 | ナノ


第一話.一難去って


「珱姫、そろそろ諦めて
ワシ達と一緒に江戸に来い」

「嫌です!それより"達"って
何なんですか?!妖様はただ
姉様と一緒になりたいだけ
ではないんですか?!」

「ぬらりひょん、貴様!
また懲りずに…江戸に戻った
と言ったのは嘘だったのか?!」

「椿ちゃん、今日も平和やと思うやろ?」

『何を呑気なことを言って
いるんですか…はぁ…』


羽衣狐を倒し魑魅魍魎の主

となった、ぬらりひょん

それから私は彼に想いを告げ

両思いになることができた。

しかし、両思いと夫婦になる

のはまた別の話で妹である珱が

納得しないかぎり無理なこと

であって一応"仮"と言うことで

話は一先ず落ち着いた。

そして今、私達が花開院家に

お世話になっているのは

言うまでもない。


「そういえば、ぬらりひょん
毎日江戸からこっちに通って
るって言ってたけど…ほんま
なんかな?」

『嘘はつかないと思うので
本当だと思いますよ?』

「信用しとるんやね」

『はい…まぁ、一応…』

「だいたい、妖様は姉様の
どこがお好きなのですか?!」

「おっ」

『よっ珱?!何を…//』


確かに私を好きになった理由

なんて聞いたこともないけど

聞きたいと思ったことも

なかったけど、改めて言われて

みれば気になる。

でも、何故いまそれを聞くの?!

とただ思うことしかできなかった


「ワシは…」

「はい」

「ワシは椿の性格に惚れた
んじゃ、もちろん性格だけで
なく全てにおいて好いとる」

『っ///』

「強いて言うなら口吸いの時の
「えっ?!」ん…どうした?」

「妖様いま何と?」

「だから、く『ぬらりひょん!!
それ以上言わないで下さい//』」

「椿姉様が…妖様と?
私は…私は、ふぇっ…」

『よっ珱、違うの「何も違わ
ねぇだろ事実なんだし」あぁ…
ぬらりひょんは黙って下さい』

「少し一人にさせて下さい!」

『珱?!』


目尻に涙をためて今にも泣き出し

そうだった珱は、そのためて

いた涙がこぼれると同時に

部屋を出ていった。



『あのね珱、違うんだよ
あれは成り行きで…』

「そんなことで、私は怒っている
のではありません!…少しだけ
…私をほって置いて下さい」

『珱…。』


今までどんな事があっても

私から離れようとしなかった

珱が今では自分から離れたい

と言っているのだ。

それは心の中に小さな穴が

開いてしまったような感覚で…


『わかったよ…じゃあ私も部屋
に戻るから落ち着いたらまた
話しをしようね?』


返ってくる言葉はなかったが

それ以上私は口を開かなかった

珱の言っていたこと…

じゃあいったい珱は何に対して

怒っているのだろう。

口吸い…ではないだろう

それでは他に何をしてしまった

のか、それがわからずいた。


『きゃっ…ぃたた、何?』


何かに躓いたと思っみた先は

自分の髪の毛よくよく考えて

みれば今まで髪を切った試しが

ない。手入れだけ続けて今では

踵辺りまで伸びきっている。

町に出掛けていた、あの頃は

髪を少しでも短く纏めようと

高い位置に結んだりと工夫

してはいたが…流石に長すぎ

と自分でも思ってしまう。


『自分のことにも気づかないし
珱の気持ちもわからない…私…
こんなお姉ちゃんでいいのかな?
とりあえず自分の事がわかった
んだし…』


髪を切ろう何の躊躇いもなく

そのような考えが脳裏を過ぎり

部屋に戻れば鋏を手に取った。


「椿、ワシはそろそろ
…鋏なんか手にしてどうする?」

『髪を切ろうと思ってるんです
ほら私の髪長いと思うでしょ?
さっき躓いて気づいたんです』

「本当にそれでいいのか?」

『もちろんです。だから…』


ある程度の長さまで髪を持ち

躊躇いなく髪を切った。

ザクッと髪を切って行く音

それは少しだけ淋しさも感じた


『長さ…ばらばらになっちゃい
ましたね?…あはは…変なの』

「ワシが整えてやろうか?」

『ぬらりひょんが?…なんだか
怖いので遠慮しますっちょっと
ぬらりひょん?』

「ん?」

『だっ…抱きしめる意味がわか
りません…離して下さいっ珱に
見られたらまた変な誤解をされ
ちゃいますだから、本当に…』

「泣きそうなのに泣かないアンタが
わりぃんだよ…椿、アンタが無理する必要はねぇ」

『私は全然、平気ですよ
泣きそうだとか…何を言って
るんですか?毟ろ今は珱の方が
きっと苦しいんですよ?』

「…なら、ワシがこうしていたい
少しだけ付き合え」

『はい…』


自分でも泣きそうだとか

気づかなかったのに彼は

見抜いてくれたんだ

そう思うと安心したかの

ように涙が零れた




「椿ちゃん朝やで〜?
と言っても、もうじき昼やけど」

『ん…っえ、朝?!』

「目、覚めた?」

『はい…あの、ぬらりひょんは
昨日いつ帰ったんですか?』

「んっと確か何時もより数刻
遅かった気が…あぁでも
ちゃんと今日も来るって念を
押して帰ってったから心配せん
でも大丈夫やと思うよ」

『そうですか…よ、珱は今どうしてます?』

「珱姫は一応朝食は受け取った
みたいやけど部屋からはまだ
出とらんみたいや…珱姫のこと
も心配せんでも大好きな姉様に
会いたくなったら自然と顔出す
と思うし今は、そっとしといて
やってもいぃんちゃうかな?」

『わかって、ますよ…』

「そんなことより、随分と派手に
切ったみたいやね」

『髪ですか?』

「妖の頂点…魑魅魍魎の主に
部屋掃除させることが出来る
のって椿ちゃんくらい」

『そう言えば私の髪…
ぬらりひょんが片してくれたん
ですね…悪いことさせちゃった
後でお礼をっ』

「なんで私がアンタの付き人の様な
真似しなきゃなんないのよ」

「そう言いながら、何だかで
着いてきてんじゃねぇか」


外が騒がしくなったと感じれば

聞き慣れた二人の騒ぎ声


『ぬらりひょん…雪麗さん?!
どうして此処に』

「コイツに連れられたのよ
いいから、こっちに来なさい」

『へ、あっどちらに?!』


雪麗さんに腕を引かれたどり着いた先は誰も

居ない日当たりの良い古ぼけた神社…。


「ほら、そこに座りなさい
此処は土地神もついてないから
心配しなくても大丈夫」

『あっあの…雪麗さん
話しがよく見えません…』

「アンタが頼んだんじゃないの?
椿の髪を整えてやって
くれって私は無理矢理連れて
来られたんだけど」

『そんなっ、雪麗さん
時間をとってしまい
…本当にすいません』

「まぁアンタが謝る必要はないわ
それより自分で切ったにしろ
限度ってもんがあるでしょ」

『すいません…』

「あぁだから!謝る必要ないの
もう少し短くなるけど我慢
しなさいよ」

『はいっ』


会話の無い空間

聞こえるのは雪麗さんの

動かす鋏の髪を切る音だけ



「これくらいでいいかしら」

『えっと…はい』


姿見なんて今現在あるわけ

ではないので手である程度の長さを確認する。


「随分と短くなったけど
前に比べたら今の方がずっと
椿にあってると思う」

『えっ雪麗さん、椿って』


何時もアンタ等と名前を呼んで

もらったことがなかったため

今こうして呼ばれると

かなり嬉しかったりもする。


「わっ私だって別に意味嫌って
アンタ呼ばわりしてたわけじゃ
ないからね…」

『はいっあの髪、整えてくれて
ありがとうございます』

「これくらいだったら何時でも
任されてあげるわ」

『ありがとうございます』

「いぃって//…そんなことより
江戸にはまだこれないの?
総大将不在ってのも組としちゃ
立場ってのがね…」

『すいません…
私が全部悪いんです』

「あっ嫌、椿を攻めよう
とか思って言ったんじゃないん
だからさ…それに全部って
しょい込むのも禁止!いいね?」

『はっはい』


今まで誰かに止められたり

せず何だかんだで自由に動き回っていたが

誰かに一人で抱え込まなくて良い

と言われたのが嬉しくてしかながなかった。


「何、笑ってんのよ?」

『何でもありません』

「そっならいいけど…じゃあ
私は此処を片してから行くから
先に行ってなさい」

『いえ!元はと言えば私が
出した物ですから私が後片付け
します。雪麗さんこそ先に
行ってて下さい』

「…それなら二人で片してから
早く戻るわよ?それに珱姫と
何かあったらしいじゃない」

『珱には私が話をちゃんと
話をしようと思います皆さんに
迷惑はかけられませんから』

「だから、ハァ…迷惑なんて
思わなくていいの」

『っ…はい』

「…は…なの!」

「だから…」

『向こうが騒がしく
なりましたね?』

「ぬらりひょんと珱姫じゃない?
よく喧嘩してる見たいだし」

『でも、この声は珱じゃない気がします』

「え?」


余りよくない胸騒ぎがして

何が起こると予想していた

わけではないがその場を

片して、ぬらりひょん達の待つ

場所まで足を速めた



『ぬらりひょん!』

「ちょっと何の騒ぎ?」

「お、随分すっきりしたもんだな
前より今の方が似合っとる」

『ありがとうございます//』

「椿お姉様!」

『ぇ?』


ぬらりひょんに話を聞こうと

声をかけたはずなのに

短くなった髪を褒められ

つい頬を赤くしてしまった

その突如いきなり見知らぬ

女の子が抱き着いてきた。


「お会いしとうございました
私ずっと椿お姉様を探していたのですよ?
妖に襲われる等と…さぞ怖い思いをされたでしょう?」

『あの…』

「はい?」

『失礼ですが…どなたですか』

「私を覚えていらっしゃらないの
ですか?…まぁ10年も前のこと
ですし当然です」


当然のように話を進める彼女

10年前?何の話なのだろう

いきなりのことすぎて

頭が現状についていけていなかった。


「それより君、椿ちゃんをさっきから
姉様って言うてるけど椿ちゃんの
妹さんやないんやろ?」

「今は…ですけど未来のお姉様
に椿様はなって下さると
昔約束したと兄様が言っておら
れました!」

『兄様…貴女、もしかして』


よくよく見れば、この子は

自分に似ている顔つき髪の色

着物の色…今は髪を切って

しまったから長さも殆ど同じ

確かに昔、そんなことがあった



「椿お姉様、見て下さい
お姉様と同じ着物を父様に
買って頂きました!」

『よかったねーーーちゃん』

「はい。珱姫、羨ましいでしょ?
これじゃあ私と姉様が姉妹の
ようですよね?」

「ーーーさん!姉様は私の姉様
なんです!ーーーさんの姉様に
なるなんて絶対無理です!」

「でも私と姉様は顔つきも
よく似てるって言われるし
髪の色だって目の色も…
それに兄様と姉様が結婚
なさったら私達は姉妹になる
のよ?珱姫は兄様嫌いなの?」

「ーーー兄様は好きですでも…」



昔そんな、やり取りをした

ことがあった気がする

でも彼女の名前は思い出せない


「そう言えば珱姫はですか?」

『珱なら「それはともかくアンタは
椿から離れろ」わっ』

「なんなんです貴方は?!」


後ろから抱きしめられ前に抱き着いて

いる彼女も引きはがされた


「たく…なに妬いてんのよ…」

「ぬらちゃんも大人気ない」

「オマエ達は黙っとけ!」

『ぬらりひょん恥ずかしいから
離れて下さい!』

「そうよ!離れなさい」

「お子様は大人しく家に帰れ」

「誰がお子様よ!私はお姉様を
迎えに来ただけなんだから」

『え…?』

「「は?」」

「私は身寄りのないお姉様と珱姫
を迎えに来たの!」


言われている話が全く見えない


「椿お姉様、まだ思い
出してもらえませんか?
私は皐月です」

『さ…つきちゃん?』

「はい!今私の家では兄様が
お姉様との祝言の準備をしています」

「なっ」

『っええ?!』



今回もまた一波乱起きそう

な予感がします。



【2011/12/14】

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