気持ちの〜 | ナノ


第十話.気持ちの名前


"妖の本来の戦"

そう口にしたぬらりひょんは

何時も見ていた彼とは違う

もっと怖い存在にも思えた。

淀姫…羽衣狐も先程のようには

攻撃せずに一瞬の出来事のよう

に目の前に彼は来ていた。


『っ』

「同じことを!!」

『(えっ?!)』


一つ目の刀が宙を舞った時

もう駄目かもしれない本当に

そう思ってしまった時

ぬらりひょんが新たに使った刀

は珱の持っていた退魔刀

その刃が羽衣狐を切った。


「な…なんじゃ…!?…その刀は」

「ハァ、ハァ…」

『(助かったの?)』

「ぬ…ぬけてゆく!?ワラワの妖力
がぬけてゆく!?」

「淀殿…!?」

「まま待て…どこは行く…
戻りゃああぁ何年かけて
集めたとおもうとるぅー!」


天井を突き破り抜けて

自分の妖力を追う羽衣狐


「椿姫、大丈夫ですかな」

『私は大丈夫です』

「っ椿!」

「総大将!ここはオレ達に任せろ
あんたはあいつを追え!
とどめを…刺しにいけー!」

「牛鬼…まかせたぞ!」


羽衣狐を追ったぬらりひょんを

私は止めるわけもなくただ

その後ろ姿を見守ることしか

でくなかった。


「椿姫っ貴女様は
こちらへ来て下さい」

『え?』

「珱姫様も来ているのです」

『珱が?!』


襲い掛かる妖を牛鬼さんは

容赦なく切り付け後をついて

行った先の部屋には珱と先程の

苔姫がいた。


「椿姉様!」

「椿姫様?!」




『苔姫…無事だったのですね』

「はいっ椿姫様こそ
ご無事でなによりです…」

「姉様っ姉様…ぇさまっ」

『泣かないで珱…』


珱に抱き着かれれば、そっと

抱きしめてあげた

"泣かないで"とお願いしつつも

無理があると思う。私は何も

言わずに珱の元を離れたのだから


「椿姉様は嘘つきです
私を、置いていかないと…
何処にもいかないと約束したではないですか…っ」

『珱…うん、そうだね
ごめんね珱…約束破っちゃって
心配させちゃったよね?』

「私は…珱姫は心配しました…
もう会えないんじゃないかって
思ったら不安で怖くて…」

『うん』


珱を落ち着かせようと何度も

背中をさすり呼吸を整えさせる

苔姫もどこか心配そう…


『もう、大丈夫だよね?』

「取り乱してしまいすいません」

『いいよ、気にしてないから
苔姫も心配をかけすいません』

「私はそんなっ謝らないで下さい」

珱と苔姫の無事が確認できれば

肩の力が少しだけ軽くなった気がした。

残るは彼…


『ぬらりひょん…』


彼が羽衣狐を追いかけて

大分経つ、それなのに彼は

戻ってこない。負けたなんて

思ってはいないが彼は相当な

傷を負っているのだ…私のせいで


「姉様?」

『私…ぬらりひょんの傷を
治さなきゃいけない…』

「何を、言っているのですか?!
危なすぎますっ無理をしないで下さい!」

『牛鬼さん!』

「何でしょう」

『私を、ぬらりひょんの所に
連れて行って下さい』

「…よろしいのですか?」

『大丈夫です』

「姉様!!」

『大丈夫だよ心配しないで
きっと、ぬらりひょんと一緒に帰ってくるから』

「…は、い」

「それでは椿姫行きますぞ」

『お願いします』



牛鬼さんに連れられ先程とは

違う場所から、彼達がいるで

あろう場所を目指す





思っていたより、その場所は

静かだった…。


『終わったの…?』


屋根の上を歩いたことなんて

一度もない。慣れないあしどり

で見つけた彼の後ろ姿

その姿にとても安心した。


『っぬらりひょん!』

「椿?!っ何故ここに?!」

『心配だったから…っあ?!』


バランスを崩してしまい落ちると

思った時、後ろではなく

腕を引かれ彼の胸に抱き着く

ように倒れこんだ



「椿…」

『心配しました…私は…』

「ん?」


いまこの気持ちを…伝えてしまおうと思う

もし次ぬらりひょんに会うこと

が出来たら伝えたいと思った

この気持ちに嘘偽りはないから


『私はぬらりひょんが好きです
これから…これからずっと貴方の側に居させて下さいっ』

「椿っ」

『え?!ちょっ、ぬらりひょん苦しっ…です』

「あっすまねぇ」

『いえっあ、早く下に戻って
皆の加勢を「敵の親玉を倒したんだ大丈夫だろ」…そうですか』

「確かめに行ってみるか?」

『はいっ』





「いて…」

『っ』

「総大将…椿姫のことをもっと考えて…」

「そ、総大将ー!」

「おぅてめーら引き上げるぞ目的は奪り返したぜ」

「バカな!?」

「羽衣狐様はどうした!」

「てめーらの大将はワシが倒した」

「下に降りて確認するといい」

『あの、ぬらりひょん降ろして下さい』

「そうだったな…っと立てるか?一ツ目」

「おお、本当にやったんですな…
さすが…我が大将…じゃ…」

「戯言を…ここからは一歩も出さん」

「やるってのかい?ワシはかまわんぜ」

「茨木童子…闘う理由があるのか
羽衣狐が、此奴らを易々と還す訳がないだろう…」

「時を待つのだ…宿願は持ち越しだ」


そして羽衣狐の率いていた

百鬼夜行は数分経たずに

すべてしりぞけた。

それから私達も帰るべき場所へと戻った





『さすがに…この家にはもう住めないかな…』

「珱姫を連れてこなくてよかったのか?
ありゃまだ心配してたぜ?」

『珱には、こんな屋敷を二度と見せたくないんです…』


私も生まれ育ってきた屋敷内を歩いてわかった

珱を連れてこなくて本当によかったと思う。

私によくしてくれていた家で

働いてくれていた人達…

珱を守るためにと集まってくれた

花開院家の陰陽師の人々

その人達の姿はどこにもいないそして

嫌っていても私を育ててくれた父様も今は…


『一日って、あっとゆう間に過ぎて行く気がします…』

「…」

『昨日までいた人達が今は
存在しない…珱を守ってくれて
ありがとうございます』

「礼なんていい、さて今夜は宴だからな行くとするか」

『陰陽師の家で宴を開ける
妖はきっと貴方くらいですよ』

「そう、かたいことを言うな」

『まったく…』

「椿」

『はい?』

「アンタが無事で本当によかった」

『…んっ///』


肩を抱き寄せられ重なる唇

優しいけど少しだけ強引で…

でもそれがまた彼らしくて

嬉しかったりもして

この人に恋が出来てよかったと思えた。





「椿姉様!助けて下さい」

『どうしたの珱?!』

「おっ総大将、こっちこっち」

「お前飲み過ぎてんだろ」


花開院家につけば、そこは

妖が沢山宴を楽しんでいて

その場所が陰陽師の家だとは

わかっていても思えない。


「ほーら、アンタも飲みなさいよ」

『えっと雪麗さん?!』

「今夜は無礼講じゃのー?牛鬼ー」

「う…うむ」

「何代かけても、あの人の口唇
うばってやる!」

『は…はぁ…』

「姉様これって絡み酒って
言うんですよね?」

『珱はまだ飲んじゃ駄目よ』

「冷たいこと言わなくていいじゃ
ない、ほらアンタも飲みなさい」

『えっ、ちょっ雪麗さん?!』

「おお!総大将」

「いやさ天下人よ!!」

『ぬらりひょん』

「いくぜてめぇら!!京はしめぇだ
ワシの背中に並んでついてこい!」


ぬらりひょんに出会い私の

生活は大きく変わってしまった

そして初めて芽生えたこの気持ち

私の恋物語は此処で終わりを

つげようと…



「そのことなんですが」

『え?』

「私は姉様とこの生まれ育った京に居たいです
駄目ですか…?」

『えっ…(その顔反則だよ)』

「知らない土地では不安すぎます
花開院殿は私達を受け入れて
くれると言ってくれましたし…」

『…わかったよ』

「椿?!…花開院って…」

「珱姫が、どーしてもって
言いはったから断る理由も
ないんで僕が了解したんや」

「秀元…」

『あはは』


まだまだ私の恋物語は

終わろうとはしなかった。



気持ちの名前(完)


【2011/11/20】

prev / next

[TOP]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -