リクエスト | ナノ
あの人はどちらかと言えば、かっこいいよりもかわいいと表される人だった。だけど、私からしたら、かっこいい人だった。たしかに、かわいい、も否定はしないけど。表情はどちらかといえば幼いし、目もそれなりに大きくてまるっこい。たまに見せてくれる笑顔は優しい。

好きだった。
いや、好きだ。大好きだ。あの人がバスケ一筋で、あの人が愛するのはバスケだと分かっていたけど、好きだ。そんなとこも、全部好きだ。

「黄瀬さん、また上の空ですけど、大丈夫ですか」

「は、へ、あ、はい!大丈夫です!」

「なら、良かったです。じゃあ、続けますか」

「もちろんッス!」

微笑。青峰っちのように眩しくはないし、赤司っちのように見た目麗しいわけでもなく、先輩モデルのように弾けるような作り笑いでもない。綺麗な、笑み。
あからさまに、さっきの返事はおかしかったはずなのに、気にしないでいてくれる。

ぽんぽん、と頭を撫でてくれる手つきは柔らかい。
ふやり、と表情が緩む。なんて暖かいんだろう。
黒子っちは影が薄いことを気にしていたけど、私はそれに感謝していた。だって、この人の優しさに触れたら、みんな黒子っちが好きになってしまうじゃないか。
そう考える私は、欲張りだ。

いつだか、この手と私の手に、同じ輝きの指輪をはめたいと思う。ずいぶん吹っ飛んでいるけど、本当にそう思った。
だから、もっともっと綺麗になろうと思う。この人の横にいられる、ふさわしい女の子になるために。
だから、今はまだ、この位置にいたい。


「黒子っち、好きッス」

立たせてくれるためにか、伸ばされた手を掴んで告げる。そしたら彼はまた、たいそう綺麗に笑って「ありがとう、ございます」と言った。ああ、やっぱり、好きだなぁ。



本当もうそも優しさも君じゃなかったらただのがらくた