燦々と照りつける太陽にゆだりそうだった。あり得ない。熱を帯びた時計は予定の時刻を三分ほど過ぎていた。三分くらいなら、普通に待ってられる時間なのに、暑さは忍耐力を根こそぎ奪うようで。帽子がなければ脳がどろどろに溶けるんじゃないかと思った。
あつ、と吐き捨てた言葉の感情を籠めて目の前のゴールを見据えて構える。
――いける、と手を伸ばし、たら。
「お待たせ、なまえ」
「うっわぁ!?」
そんな呑気な声と共にひょいと視界に手が出てきて、それにそのまま視界を覆われる。冷たいわけではなかったけど、急に視界が真っ暗になって驚かないほど私は鋼の心臓を持ってたわけじゃなかった。
放とうとしたボールをあらぬ方向に吹っ飛ばしてしまったのが、熱を吸ったゴムの感触が離れていくことで分かった。
「すごい声だな、なまえ」
さっきとは違う声。手がするりと離れていく。急に明るくなる視界に目がチカチカする。
じりじり。太陽は照ったまま。どうせなら、目の前にいる男二人を焼いてしまえばいいのに。そしたら炎天下で待たされた私の気持ちが分かるだろうに。たかが三分、されど三分なのだ。
「近くにある図書館で待ってれば良かったろ?」
「バスケしたいからストバス待ち合わせ場所にしろって言ったのは木吉じゃん」
「そうだっけ」
「…そう言うと思ったけどさ」
「けど、なんだかんだで待ってやるんだよな、なまえは」
「伊月!」
「そうなのか?優しいな!」
「違うから」
というか溶けるとこだったんだけど、こっちは。言いたかった文句は二人の笑みに跳ね返されて逆戻り。苦し紛れのように優しくないよ、と転がったボールを拾い上げて呟く。
ふと、伊月が気づいたように声を溢す。
「ああ、そうだ。ほい」
「あ、俺も」
「へ?」
「暑いなか待ってたんだろ?」
はい、と伊月に差し出されたペットボトルと木吉に差し出された黒飴。…伊月は分かるけど、なんで黒飴。喉乾くよ、逆に。
けど、私にそれを受け取らないっていう選択はなく、「ありがとう」と控えめに言ってどちらも受け取った。あ、や、受け取らないって失礼すぎるから。
「で、バスケしてくの」
「…―暑いから、やらないでおくか?」
「やりたいって顔してんのによく言うね。いいよ、付き合う」
ボールを木吉に向かって放る。とたんに端整な顔がふにりと嬉しそうに緩むから、伊月と一緒に笑ってしまった。分かりやすいな、って。
愛しいとおもうすべての熱
……ほのぼのしてますか、これ