木吉くんのこと、好きなの。
友達は興味ありげに聞いてきたけれど、満足するような答えはあげられない。
たしかに、よく一緒にいるけどさ。現に、今も横にいる。
けれど、それだけなのに、なんで好きに繋がるんだろうか。一緒にいるだけなのに。あれ、それがいけないのか。
女の子は難しいな、と眉を寄せていたら、横にいた木吉に眉間をつつかれた。思わず、何をするんだと手に持っていた紙パックを木吉の緩い笑みに押し付けてしまった。
「痛いじゃないか」
「びっくりしたじゃない」
「だって、なまえ、眉間にシワ寄ってるぞ」
「だからって、急につつくやつ、いないよ」
びっくりした、ともう一度小さく呟けば、木吉は悪い悪いとたいして悪びれてもいない風に笑った。いつもと変わらない顔である。
それに溜め息が溢れるのも、いつもと変わらない。
私たちの関係性は、一年生の頃から対して変わっていないと思う。
たとえば、私が木吉を好きだったとしても、きっと木吉はそれに気づかないし、木吉がこんなんだから、私もきっと気づかない。
分からないんだよね。
言わなかったら=B
「ねぇ、木吉」
名前を呼べば、木吉の暖色な茶色の目でこっちを見た。
「ん?」
「好きだよ。さっきだってね、木吉のこと考えてたんだ」
本当に。
疑うこともないだろうけど、念を推すように言えば、木吉の顔が、ただでさえ緩かったのに、さらにゆるゆるになる。…効果音をつけるなら、ふにゃり。
次いで額に落ちてきた柔らかい感触に、私はもう一度、紙パックを押し付けた。
「う、やっぱり痛いぞ…それ」
「ここ、学校。場をわきまえなさい」
「それなら、なまえだって」
「うるさいよ」
好きだから心配するな、バーカ。
あの友達は木吉が好きらしい。だから私はあの友達に彼女が期待するような返事はしてあげれないのだ。
にしても、危なかった。
知られたらリコに殺されるわ。ただでさえ木吉のこと黙らせんのに精一杯なのに、広めてたまるか。
残念ながら、彼女持ち