××企画 | ナノ


*この場所で番外


いつまでもそばに、何度あいつに願ったか。そばに、それは云わば軟禁だと、分かっていた。けれど、あの弱々しいようで、どこか強い意志のあるあいつを手元に置いておきたかった。


「あ、アーサー」

「今はイギリスだ」

「そうでした。おんなじことですけどね」

くすくすと笑うなまえにあの頃の弱々しさはない。変わってしまった。戦争が終わりあいつが望んでいたであろう平和。
あいつはもうあの感情を持つ必要がなくなったのだろう。

「イギリス?」

「あ、ああ。どうした」

「どうしたじゃありませんよ。アメリカが呼んでいますけど、行かなくていいんですか?」

ほら、と指差された先にアルが手を振っていた。早く来い、ということだろう。行く、と返せばなまえはいってらっしゃいと笑っていた。

「また時間があるときにでも話せればいいですね」

「なまえ…」

「今はスペインです、イギリス」

「…そうだったな」

「イギリスが言っていたんじゃないですか」

まるで国であることを誇っているような言い方には、やっぱり弱さはなく、ただ強い意志だけがあった。


なぁ、どうしてお前は。
変わったんだ。

「いってらっしゃい、イギリス」

どうしてお前は今さら国となれた。国でありながら国であることを否定していたお前が。どうして。



手の届かない場所にいるきみがどうしても愛おしくてね


まるでもう触れないようだ



芙蓉様へ捧げます。
この場所番外編でアーサーお相手でした!本編でも二人のお話、気に入っていただけてよかったです。企画参加ありがとうございました!!