××企画 | ナノ


*志摩成り代わり
男主


作り笑いはお手のもの。だって笑っていれば悪い印象を持つやつなんていない。別に、楽しくて笑っているわけじゃない。楽しいことなんてこんな退屈な日常にあるはずない。
誰も気づかないのだ。気づけないのだ。…ああ、何が楽しくてこんな場所にいないといけない。

坊を守れ?ああ守るさ。
だからってなんで祓魔師になるためになんて授業を受けなきゃならないんだろう。
知らないだろ?昔から力をつけろと祓魔やら歴史やらを学ばされ守るためだけに生きてきた俺に。
ただでさえ苦痛だったのに、なんでまたその苦痛を味わなければいけないのだろう。口を開けば志摩たるものは。志摩ってなんだよ。けどいろいろ言われるのもめんどくさくてただ笑って頷いた。

だれも分かるわけねぇと、思っていたのに。

そう、今この時まで。

「なんで」

「奥村?」

「なんで楽しくねぇのに笑ってんだ、お前」

こちらを見据えて言ってくる奥村にぱきりぱきりと何かが音をたてる。

「なんのことかな?」

「お前のその笑い方のことだよ。おかしいだろ、楽しくねぇのに笑ってるとか」

…ああ、なにも楽しくないさ。

「んなこと言われてもなー、元からだし」

「元から笑ってるやつなんていねぇだろ」

「いや、そこまで戻んなくても」

笑いながらも内心、壊れていきそうな何かを縛り付ける。妙なところで鋭い。

「なぁ、志摩」

口をまた開いた奥村に、ぱきりとまた何かが音をたてた。

「お前って楽しいとき、あんのか?」



…─なぁ、奥村。
なら、お前は俺を理解できるのか?

楽しいなんてとき、一度もないと。



まだきみと友達でいたかったなあ