*一葉成り代わり あれはなんなのだろう。 泣きたいような虚しいような気持ち悪いような。 なんなんだ、あれは。あれは知らない。 あれは、誰。 どこかも分からない廊下でへたりこむ。どれだけ走ったかも分からない。息が落ち着かないからかなり走ったことは分かる。 でも、そんなことはどうでもいい。ねぇ、どこ、どこにいる。 「おや、なまえ?」 「りゅ、せい」 顔を上げれば、龍井が不思議そうな顔をして私を見下ろしていた。 迷子になったときだったら安心できた。でも、今の私にはそんな余裕はない。ただ龍井に縋りついて問いかける。 「なぁ、あれはなんだ?あれは誰なの?あんなの私が知ってる珠龍じゃない。あんなの知らない」 「落ち着きなさい、なまえ」 「なぁ、誰なの?ねぇ。珠龍は、どこ?」 珠龍はあんなふうに笑わない。あんな作り笑いなんかしない。 いくら重ねて聞いても龍井は答えない。ああ、そう龍井でも分かんないんだ。じゃあ、いないんだ。ぽたぽたと落ちてく涙を拭う気にすらならない。 珠龍はいない。 私はたった一人の友達をなくしたのだ。 ああ、吐きそうだよ きみが好きで好きで堪らなかったあの日のことです |