悲しみの心を持てば死ぬ。なんて重い枷だろうか。 しかし、なまえは自らそれを受け入れた。いや、むしろ望んだ、という方が正しいのかもしれない。 大切なものを取り返し、守るためとはいえ、そこまでやる必要はあったのだろうか。 …しかも、彼女がそれを受け入れる状況を作ったのは自分達にも非がないとはいえない。なまえは気にしてなどいないだろうが。 「良かったのでござるか?」 「何がぁ?」 そんな点蔵の気など知らない少女は問いかけににへらと笑って首を傾げた。 つられて気が抜けそうになるが、その笑みがあの時と重なり、つきり、と胸が傷んだ気がした。 あの状況でも、死ぬという枷を背負っても笑ってられるなまえは強い。 だからこそ。 「自分は、なまえ殿の力のことはよく分からんでござる。しかし、」 「危ない?」 「!分かっているのなら…なぜ」 「あはは、ねえ、点蔵。私は生きてるんだ」 不意に見据えられ、言葉に詰まる。確かな王の目。 生きてる、とはどういうことなのだろう。 なまえは点蔵を見据えたまま続ける。 「不可能女でも、生きてるなら戦わないといけないんだよ。ネイトや姉ちゃん、皆も戦ってるし。王だからといって見ている余裕は私たちにはない。まぁ」 皆を信頼してないわけじゃないけどね。 からから笑うなまえ。 いつもの笑みとなんら変わりないはずなのに、それはどこか虚勢に見えた。 やはり、この王は。 「なら、」 「?点蔵…?」 その細い体を腕に収めればなまえはまるっこい目をさらに丸くした。 この細い体で、自分達の上に立ち戦ってきたのかと思うとやるせなくなる。─守らなければ、と思う。 少女の体温が、腕から伝わる。生きてる、たしかに生きている。 点蔵は見えない顔に笑みを浮かべた。 「なら、自分はその道を守るでござるよ」 我が、王。 ネイトのように内心呟いて、「jud.」とまた変わらぬ笑みを向けた少女を抱きしめた。 彼の意識に愛などという言葉は浮かんでいなかった 水無月 宙様に捧げます。まさかトーリ成り代わりをリクエストいただけるとは。ありがとうございます!点蔵の口調がおかしいですが気にしないでいただけるとありがたいです。企画参加ありがとうございました!! |