目の前を飛び交う枕に柔造はこめかみに青筋を浮かべた。 いつものことながら、この兄妹の喧嘩は壮絶だ。基本的に志摩家の人間は仲がいい。喧嘩は…あるにはあるが、大半はこいつらが占めるのではないだろうか。呆れと怒りが入り交じったため息を吐き出しながら柔造は思った。 「金兄が悪いんじゃない!私はなんもしてないでしょ?」 「っうっさいわ!」 「吹っ掛けといてそれ?」 金造は家族想いだ。少々血の気が多いが。それは志摩家の特徴のようなものだし、致し方ないだろう。 なまえは血の気は多くない方だろう。上が上だからだろうか。反面教師、とでも言うのか。いつも苦笑いしているのがすぐ頭に浮かぶ。 なまえに苛立たしげに睨まれ金造はすぐに言い返すもどこか苦い表情をした。 「なまえ、金造」 「柔兄!?」 「…私なんもしてないからね」 「なまえ!」 呼び止めようとすればなまえは小さく違うから、と呟いて横を通りすぎた。ただ、なまえの表情は楽しげだった。 ─なるほどなぁ。 その表情の意味を悟り、柔造は小さく笑う。 そのまま立ち尽くす金造に視線を移した。 「金造」 「…何」 「あんま気にすんやないで。あいつに遊ばれるで」 仲良くしたいんは分かるけどなと笑えば金造はちゃうと叫ぶ。 赤くなっているあたり、図星なのだろうけど。 それでも安堵したような顔をする金造にやっぱりと笑った。 ** 「なまえ、あんま金造いじめるんやないで」 「いじめてなんかないよ、からかってるだけだから」 からからと笑うなまえ。それでもどこか楽しそうに見える。 「いいんだよ、溜め込むのはよくないしね」 「溜め込む?」 「任務。金兄、家族想いだからねー。たまには喧嘩もいいもんよ?」 ひとはずっと気を張ってはいられないから。捌け口がないとね。 たおやかに笑う妹に、「そうやな」と柔造も柔らかに笑った。 ぽろり、と感情が溢れ、わたしのまわりが潤っていくのです 匿名様へ お名前がなかったので匿名様とさせていただきます。霞草の願いは兄妹人気です!嬉しい限りです。企画参加ありがとうございました!! |