*一葉成り代わり !とある神獣→一葉に成り代わる 愚かとはなんだ。愚行とはなんだ。 笑みを浮かべて問えばさんざん罵ってきた輩はどよめいたあとまるで蜘蛛の子を散らすように散っていった。…たわいもない。 小さく笑って横の水神を促す。 「いくぞ、てんこう。」 「いいんですか?」 「なぜ、ただ喚くしかできないあいつらを私が相手しなくてはいけない?構っているだけ無駄だろう」 群れでしか生きてゆけぬのか、人間は。もともと気高いものだとは思っていないが、ここまでとは。 采和や孫登はいて楽しくてたまらないのに。やはり、同じではないのだな。小耳に聞こえる小言が酷く耳障りだった。 ▲▼ 「采和」 にこり、と笑う弟子を迎い入れる。子供のくせしてどこぞの宮廷仕えのように緩やかな動作であいつは入ってきた。てんこうは、と聞けば喧しいから置いてきたとなまえは返しながら俺の横を通りすぎた。 あまりにあっさりした答え方は相変わらずで苦笑いした。 不意になまえが振り返った。紅い目が俺を映し、細められた。 「なぁ采和」 「ん?なんだ」 「愚かとはなんだ」 それは唐突だった。 なまえがこんな問いをかけてくるのはたまにあったが、こんなに唐突だったのは初めてだった。 何かを望むような声音。 同時に何かを諦めたような声音。 言葉が出なかった。 そんな俺になまえは表情を崩して小さく笑った。 こいつはいつだってそうだ、子供らしいところなんて、ひとつも見せず何かを気遣うようだった。けれどそれは他の歌士官には一度だって向けられていないらしい。もし向けられていたなら、もっと他のやつらからあいつに送られる目だって変わっただろうに。 あいつが他の歌士官に向けるのは、敵意のみ。 なまえが髪に刺さっていた簪を抜く。それは俺がやったものだった。 なまえが俺を見据える。 「愚かとは、なんだろうな?愚行なのか、はたまた愚言なのか。しかし、」 それではまるで歌士官のやる足掻きも愚行だ。 小さく吐き出された言葉。 「なにを、」 「なぁ、なぜ私たちは。苦しむと分かっていても神を捕らえ従え。定めに足掻くのだろうな?」 ─神の気持ちも理解せず、ただ生きるために。 そう呟くなまえの眼はどこか哀しげに揺れていた。 「分かり合えることは、ない」 分かり合えないのだろうな。私も、お前も。 その言葉が、昔、潔斎してやれなかった神獣に重なった。 あそこにおわすはわたくしの罪ともいえるお方 たち様へ捧げます。 素敵なネタ、ありがとうございます!書いててとても楽しかったです。企画参加ありがとうございました!! |