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*霞草の願い番外


冬に百物語なんて。
呆れながら紡がれる話に耳を傾ける。もう何話目だろう。長い時間、こんなことをしていると感覚が麻痺してきそうだ。

なんというか、冬休みに与えられた時間にこんなことをやるのは如何なものなのか。

怖い話は苦手ではないし、大概は霊の仕業だと割り切れてしまえるから、時折上がる悲鳴が新鮮に感じる。

「おーい、次なまえだぞ」

「へいへい。何話目?」

「お前で98話目やな」

「うわ、もうそんなにやったんですか。じゃあさくさく行きますね」

「─…全然怖がってないあんたがすごいわ」

「さすがやねぇ」

てか、残ってる蝋燭見れば分かるでしょと言われて、今さらそうだと気づく。
ぼーっとしてたから分からなかった。神木さんの言葉にそう呟く。と同時にしえみちゃんがくんと袖を引いた。

「しえみちゃん?」

「なまえちゃんって、お家、お寺なんでしょ?お話、怖くない?」

「んー、じゃあしえみちゃんにも怖くない話にしようか」

しえみちゃんに笑みを向けて頷けば、しえみちゃんは良かったと笑う。というか、しえみちゃん、あなたのお寺のイメージはホラーですか?
苦笑しつつ、私は口を開いた。

「それでは─…」


**


「大事な時期に何をしてるんですか、君達は」

奥村先生は笑みを浮かべているけども眼鏡の奥の眼は一切笑っておらず、背筋が凍る。
横の燐達もひくりと顔をひきつらせたり溜め息を吐いたりしている。
うん、こうなるよね。
苦笑しながら膝にある囀石を撫でた。

「ほんま、ないわ」

「やるんじゃなかったぜ…」

「言い出しっぺはあんたでしょ」

坊の溜め息を皮切りに皆口々に愚痴を溢す。
あら不味い。薄々分かる未来にひくりと顔がひきつった。

「なら、やらないように」

にこり、と最上級の笑みを浮かべる奥村先生に、今度こそ皆から笑みが消えた。


お約束の展開というのをご存知ですか?




李様へ捧げます。
いつもいつもありがとうございます!ほのぼのになってますかね?なっていればいいのですが…。企画参加ありがとうございました!!