日向ってさ そう切り出してきた伊月に順はなんだと顔を向けた。 更衣室で。残っているのは伊月と順だけだ。順はペンを動かす手を止め、こちらを見下ろしていた伊月を見上げる。 伊月は小さく笑みを浮かべて順を指差す。 そして一言。 「日向ってさ、エロイよね」 「………は」 はあ? 順はぽかんとした顔でそう声を溢した。次の瞬間にはまるで変態を見るような目で伊月を見た。何を言っているんだこいつは。それさえ様になるのだから美男は不思議だ。 順の様子に伊月は苦笑いしたあと、彼の頭に浮かんでいたであろう思考を打ち消すように言った。 「って、クラスの女子が。やっぱりモテんだな日向」 「……そうなのか?」 順は少し表情を和らげ首を傾げた。なんとなくその動作が幼く見えた。 順ははっきり言ってモテる。性格は素っ気ないが、優しく気が利くときもあるし、バスケ部部長。何より顔立ちが整っている。後輩であれ同級生であれ。彼自身、自覚はないらしいが。だから質が悪いというかなんというか。でも威張らないため(自覚がないせいか)、さらに株は上がるのだ。 「伊月もモテるんだろ?つうか、お前の方がモテんだろ」 ほら、また。 「日向って罪だな」 「は?」 また首を傾げた順に伊月は何でもないと笑った。 無自覚って罪ですね (だからなんで罪なんだ?) |