フリリク企画 | ナノ
( きみの名前を呼ぶよ。 )
刀が誰かを愛してはいけないなんて誰が決めただろうか。
私の頭を撫でてくれる一護は私の持ち主というやつで、私の大切なヒトだ。
はっきり言ってしまおう。私は一護が好きだ。誤魔化す必要などどこにもない。一護は誰かを好きになるということはその者の自由であり、なにかに囚われることはないと言っていた。だから私は言おう。黒崎一護が好きだ。
「一護、また来たの?」
「来ちゃいけなかったか?」
「まさか」
ニカリと笑う一護は眩しい。首を横に振ればならいいだろと彼は笑みを深くした。綺麗だった。
精神世界でしか私は一護と会えない。一時期は村正のおかげで実体化することができたけど。
「よく来た、一護」
「ああ」
傍まで寄ってきた一護の広い胸元に抱きつく。
彼はよろけることなくそれを受け止める。はじめは細かった体もがっしりして、顔も大人びたのが間近で見ていて分かる。
これが私の主だと思うとなんだか誇らしい。
力も相応しいものだから、たまにあまり力を持たない主を持つ斬魂刀は羨ましがるのだ。絶対に譲らないけど。
私の髪を一護がすく。
主が現れるまで、私の世界はたいくつなものだった。なにもなくただ孤独な世界。そこで独りだったのだ。
あまり、ヒトは好きではない。自分勝手で弱い。けども、一護は違った。強くなろうとしていたし守ろうと自分を犠牲にすることさえある。だから私は一護の主になりたかった。
もしも神がいるならば私は一護の刀になれたことを心底感謝しよう。
一護、お前がいるから。
お前がいるからこの私の世界は色づくの。
「一護」
「ん、なんだ?」
こちらに向けられた茶色に私は笑う。
「私はな──…」
お前を愛しているよ、一護。
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