小説 | ナノ
*志摩成り代わり
*なので志摩は出てきません
*駄目な人はバックしてください











今思えば、あの頃から惹かれていたのかもしれない。いつも側にいた彼女の、あの笑顔に。

昔から名前はよく笑った。怒ったりすることもあったが、笑っていることの方が多かったと思う。

いつも勝呂の側にいて勝呂が怪我をして泣きそうになったときは大丈夫、と笑って勝呂の手を引いた。

勝呂もその笑顔を見るとなんとなく安心できたのだ。

好きだった。
その笑顔が。

「坊は最近泣きませんね」

名前は畑で作業する八百造や門徒達を見ながら言う。手伝う気がないのではなくて、手伝ったから休憩中なのだ。証拠に白い手は土で汚れていた。

「当たり前や!女の前で男が泣けるか!」

名前の言葉にそう返す勝呂だが、名前は手を拭きながら面白そうに目を細めた。

「前はいっつも泣いてたじゃないですか」

「う…それは昔の話や!」

「昔ィ〜?なぁに長いこと生きたみたいなこと言ってんですか。坊はまだ子供でしょう?」

「や、やかましいわ!お前かてまだ子供やろうが!」

「誰も私が子供じゃないなんて言ってませんよ」

からかうような名前に何か言い返してやろうと思うのに言葉が浮かばない。彼女の方が一枚上手なのだ。そんな勝呂を見て名前はフッと表情を緩め勝呂の頭を撫でた。勝呂は名前を見る。

「坊」

「…なんや」

「坊はまだ子供なんです」

「まだ言うんかお前!」

勝呂が叫ぶが名前は気にせず続けた。

「だから、好きなだけ泣いて良いんですよ?」

そのときはまた私が慰めてあげますから

そしたら、坊はまた笑ってくれるんでしょう?


そう言って名前はあの笑顔を浮かべた。まるでそれは太陽のようで。
思わず見とれた。


あれから随分たったけれど。

「坊、何してるんです?」

「…何でもあらへんわ」

「変な坊ですね」

「なんやと!?」

「あはは!」

あの笑顔は変わらなくて。それを見るたびに頬が赤くなりそうになるのは、

(やっぱり惚れてるんやな…こいつに)

君の笑顔を見ると、
今でも思うんだ。


たいようみたいって、心から思った

(君の笑顔が好きだった)
(だからその笑顔を守りたいと思った)



企画「夢をみる青」様に提出させていただきました。

back