「なぁ、名前」
なに、隠してる? いつもの調子者の声音はどこえやら、トーンの低い声に俺の眉間には皺が刻まれているかもしれない。 覗いてくる翡翠の瞳にはやっぱり眉をひそめた俺が睨み付けていた。
「なんのことだ、ラビ」
「そのまんまさ。名前、お前気づいてる?顔、真っ青」
「─…」
気づいてないわけないだろ。内心毒づいても目の前の男に聞こえるわけはない。自分のことだ。体調が優れないときだってすぐ分かるし、イノセンスになにかあればきっと誰より早く気づける自信がある。 自分の体がばかみてぇに弱いことだって、な。
「ああ。だろうよ」
「っ分かってるなら何でさ!?
隠していたつもりだったが、意味がなくなったなら、続ける意味はない。 淡々と告げれば。 翡翠が見開かれ、あまり聞かないラビの憤った声にどこか平淡としている俺がいた。 ラビは嫌いじゃない。 大切な数少ないやつだし、可愛いと思う。なんだか弟のようで甘やかしていたらなつかれた。自惚れでなければ、だが。 そんなラビの言葉を、どうにも感じないなんておかしな話だが、事実だ。 でも、ラビがらしくもなく泣きそうだったのには、なんとも言い難い罪悪感。俺もまだ人間だったってことだな。
「元から、弱いんだよ。体。どうしようもねぇだろ」
「…っ」
「熱なんてザラだ。悪きゃ吐血して死にかけるなんてザマだがな」
吐き捨てるように言えば、ラビがくしゃりと表情を歪めた。 前言撤回。俺は酷なやつかもしれない。もしくは、愛されたがりか?死ぬのにびびって、寂しがって。どこのウサギだと笑いたくなった。
「名前はっ、死なないよな!?」
「…どーだろうな。でも、置いてかねぇよ」
約束があるから。 なんの約束と問われればたくさんありすぎてキリがないのだが。
同じくらいの位置になった(俺の方が若干低い)を撫でてやればラビがいつもどおりに、でもどこか泣きそうな顔して笑う。 そんでもって、抱きついてくるのだ。軋む骨。背中が痛い。 それでも非はこちらにあるのだから、何も言わなかった。でけぇ子供みたいだな、とは思ったけども。 悪いな、と返せば、ならいなくならないでほしいさ、と返され苦笑するしかなかった。
艶やかの黒髪剣士が眉を寄せる。
「愛されたがりめ」 「ごもっとも。否定はしねぇな」 「否定しないのか」 「しねーよ、…─ユウ」 「神田だ、モヤシ」
愛されたがり、また罵るように繰り返す男は悲しげに瞑目しているようで、笑うこともできない。 こっちの方が、つらい。
泣き出しそうに、子供
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