居心地の悪さに身を捩る。これだけでこの状況を抜け出せたならどれだけいいんだろうと思うが現実ってやつはそんなに甘くはない。190センチ超えの男から女がどうやって抜け出せようか。
そもそもなんで帰り道に手を掴まれなければならないのか。
じと、と汗ばみそうな手にいい加減離してくれと内心叫ぶ。 掴まれた手から伝わる熱に現実を突きつけられてるようだった。
「木吉、あのさ、」
「名前ってさ、手小さいよなあ」
「…規格よりはある程度大きいよ」
言われた言葉にボソリと返す。 バスケをやる身だから、周りよりは大きい。規格外のサイズの木吉からは小さく見えるかもしれないけど。溜め息を吐き出し、木吉を見上げてもう離すように言うが、聞き入れては貰えずじまいに終わる。 人はいるのだから、セクハラだなんだと叫んでしまえばいいのに、叫ばないのは本気では嫌がってはないんだろうな、と苦笑して木吉はさらにその手を見る。 また溜め息。
「何が楽しいの、それ。綺麗でもなんでもない手、見て」
「綺麗だと思うけどな」
「んなわけないでしょ」
周りより爪だって短いし、飾ってないし。ケアだってしてない。ボールを毎日ののように掴むから手のひらはやや固い。 確かに男よりはましな、でも女と比べるとずっと。 そんな手のどこが綺麗だと言うのか。 理解できない、と言いたげな視線を送って来る名前に木吉は笑って「そんなことない」と彼女の手を持ち上げた。 その行動に名前が首を傾げた。
「だって、一生懸命バスケをやってる手だからな、名前の手は」
「褒めてるの?それ」
「あぁ」
満面の笑みで頷かれ、名前も脱力したように力を抜いて呆れたように笑った。 なら、ありがとうねと。
温もりで出来た生き物
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