企画 | ナノ

昔から、尊敬してた。
同じ術を使うのに、私なんか足元にも及ばない圧倒的な実力を持つひと。
そんな人が私の真横にいるってどういうことだ。

「なにしてんですか、あなた」

「あ?」

「すみません。お願いですから睨まないで」

女顔負けの綺麗な顔とは対照的すぎるドスの聞いた声に背筋に寒いものが走る。美人だからなおさらだし。サソリ…さんはつけるべきか否か迷うけれどきっとこの人は様ぐらいつけろとかケロッとした顔でいいそうだ。
つうか、言うよ。言われたよ。前だけど。S級犯罪者っていうけど、性格までS級なんじゃないの。

とりあえずとても逃げたいのだけど、首から下が動きません。誰か助けてください。

「あーその、サソリさん。なんでここにいらっしゃるんですか?」

「なんでお前にんなこと話さないといけないんだよ。ヤるぞ?」

「すみません!」

なにこれさっきから謝ってばっきじゃないの私。
というかヤるぞって…この人ならやりかねない。二度目の悪寒にたまらず頬がひきつった。
そう、忘れちゃいけない。この人は所謂“暁”ってやつで、犯罪者。まぁ、言うなれば要注意人物にあたるわけだ。
そんなサソリさんになぜだか目をかけられて、毎度毎度この人は会いに来る。そのたびに、ちょっ、私死ぬんじゃね?なんて寿命が縮む思いをしている。これじゃ瞬殺か衰弱死させられそうだ。道が二つしかないとか私終わった。

「…なんで毎回会いに来るんですか…捕まりますよ?」

「心配してんのか?」

「いや、そういうことじゃ…」

むしろ逮捕されてくださいと言いたいところだけど、それはそれで寂しいものがあってなんとも言えない。あー、うー、と唸っていれば、サソリさんがこの世のすべての女の人を落とせるんじゃないかってくらいの極上スマイルを浮かべた。そうだろ?そんなんだろと言わんばかり。高鳴る胸。恐怖にマイハートがマックスハイビート。
笑顔が怖い!

「可愛いこと言ってくれるじゃねえか、名前」

耳元で囁かれたテノールに私の顔は真っ青になっている。

「このまま帰れるなんて思ってないだろうな?わざわざ出向いてやったんだ。付き合えよ?」

「あ、ははは…」

なら来んなよ。とは死んでも言えまい。




あなた=×××